漫画「さよなら絶望先生」の感想――風刺だけでなく文学的コメディも有り

週刊少年マガジンにて2005年から約7年間連載された漫画、「さよなら絶望先生」(全30巻)の感想を書きます。

作者は、前著「かってに改蔵」、以降は「じょしらく」や「かくしごと」でお馴染みの、『久米田康治』先生です。
(先生ネタでは流石に自分のことを先生とまでは言わなかったな……)

大正ロマン、昭和レトロな雰囲気を全体的に醸しながら、ネガティブな絶望先生と女生徒中心の学校で繰り広げられるコメディ漫画です。
久米田先生お得意の時事・風刺ネタはもちろん非常に多く、それ以外にも様々なネタが散らばっており、ある意味教養漫画です。ある意味。
そして、ハーレムものでもある。

最終盤以外は一話完結ものですから、つまみ読みするには最適の漫画です(笑)

皆はどのキャラが好き?

大半のキャラは名前と性格(立ち位置)が一致しており、様々な『属性』(性癖?)が網羅されています。
久米田先生曰く「色んな女子出しておけば人気出るんじゃ?」と思ったそうで、まあ実際その通りになったんじゃないかと……

結局一番面白いのは恐らく太宰治と久米田自身をモチーフにした「絶望先生」、なのかな!
ハーレムものなのになぜか腐女子の方々からの人気があるのも、恐らく先生が原因じゃないのかい?
かわいいよね、フフッ!☺

男キャラでは一旧さんも好きです。
淡々と変な人って良いよね……書生風ファッションも良いし。
ほぼ唯一の同年代同性としての絶望先生との絡みも良いし(ニャマリ)

でもまあ私も男ですから、好きな女生徒はいます。
物語が進むにつれて印象も変わっていきましたが、個人的な好きなキャラ最終順位はこんな感じ↓

1位 加賀愛
2位 常月まとい
3位 小節あびる

愛ちゃん!は最も徐々にキャラが立ってきた人物ですね。
自己を卑下するところが久米田先生と相性が良いのか登場は多くなってくるし、たまに見せる責任感や教養やツンデレは刺さりますわ……
一辺倒だけのキャラにしなかったのは成功ですよ。
風浦可符香を置いたら、絶望先生と最も可能性あるのは愛ちゃんだったりする。

まといはストーカーキャラですが、単なるヤンデレ異常者(言い方!)ではなくクールさと凛とした佇まいも備えていて、登場も多かったので好きになりました。
また、まといが常に和服着てなかったらこの「絶望先生」ももっと普通の現代学園モノに思えたことでしょう。

あびるはスタイル良くてサービスシーンも多いながらクールなのも良いキャラしてる。
自分の肉体美に対して押し付けがましくも自信がみなぎっているわけでもないから、なんか色々見たり触ったりしても許してくれそう。
いつもありがとうございます!
木村カエレの立ち位置……奪っちゃったのでは?

う~ん、こう見ると私ってやっぱクール系キャラ好きなのかな。
ハーレムもの読むとさあ、自分の性癖丸わかりでちょっと恥ずかしいね!

美術・衣装は凝っている

主人公の絶望先生が太宰治モチーフだからなのか、先生は大正時代辺りの衣装を着ており、その影響で生徒たちも和服を着ることが多いです。
明治・大正の和服って、江戸時代の裃や褌とは違って現代人にも受け入れやすいレベルで和洋の良いところが組み合っており、非常に魅力的に映りました。
綺羅びやかな和服の柄なんて、トーンを貼って終わりではなくてちゃんと書き込んでいるようですからね。
人物はシンプルなのにこういうのにはこだわるんだよなあ、久米田先生は。
そういうところがシャフトのセンスとも合って、アニメ化は成功したんだろうか!?

女生徒の大半はほぼ毎回セーラー服で、まあセーラー服は好きなんだけど(ゲス顔)、衣装面に関しては絶望先生の影響で和服着ている常月まといが印象的。
女袴にブーツ!まさに「はいからさんが通る」の大正ロマンな女生徒。
袴って普通のパンツ(ズボン)に比べたら地面に擦って汚しそうだけど、ブーツだったら少し短めに出来て汚しにくそうでいいですね。
自分も、袴にブーツしたいな……って思えてくる。
そのくらい、この漫画には衣装の魅力が伝わってくると思います。
漫画技法としてのブチ抜き4段も、全身像を映すには非常に良い手法です。

時事ネタだけではないネタ

久米田先生と言えば風刺・時事ネタってくらい、この作品でそういうイメージが定着したように思いますが、それ以外のネタも多いです。
むしろ今の私のように異なる時代に読む場合は、時事以外のほうがよく分かって面白かった。
時事ネタは後から読むと「ああ、そんなこともあったな~」と思いを馳せるだけで、クスリとは笑いにくくなってくるような気がする。

やっぱり私含めネガティブ系の人間は興味持ちがちなのだろうか、たまに仏教系ネタがあるのは驚きます。
愛ちゃんの傘とか放生会とか戒名とか。神道やキリスト教はそこまで多くないのにね。
それに文芸ネタや心理学ネタもまあまあありますね。
教養が、身につき、そう……?

そういう、昔からある古臭いと思われるもののほうが何だかんだ後世にも通じるのかな~って漫画の価値の行く末も思いながら読みました……
時事ネタは風化しやすいって、久米田先生自身も分かりきっていることなんでしょうけれど。

先細りだと思わせない最後の展開

ループ系コメディ漫画は作者のやる気や年齢による変化によって面白さが変動するので、だんだん面白くなくなって先細って終わってしまうこともありそうです。
だけどこの漫画は最初から結末を決めていたからか、最後に急展開を忍ばせてくれたので、物語としてのカタルシスも得られることが出来ました。

コメディ漫画を読んだ読後感じゃないですよ、これは。
先細って終わったものは何だか最後に「あはれさ」を感じてしまうのですが、絶望先生に関しては「よくやった!」と言えます。
自分としては、最終盤だけシリアスにするのってこれだけ効果的なんだ……と実感。

1巻に載ってた嘘予告を最終盤でも使うのはなかなか凄い。
まあよくよく考えたら辻褄合わないところもいくつかあるんだけど、今までのことを読者に思い返させる試みは全くもって素晴らしいものだったと思います。

 


「絶望先生」全30巻、総括すると可愛らしい女生徒たちに萌えながらも、何巻何話からでも読み直せる気楽で楽しいものでした。
しかも最終盤には文学性もあり、久米田先生の実力も十分見ることが出来た漫画だったと、私は感じました。

漫画

Posted by YU