いちご同盟
私が読んでいるのは青春小説ばかりなのか・・・
と、思うようになったけれども今日読んだいちご同盟の感想です。
読むきっかけとなったのは、適当に面白い青春小説を探していたら見つけたって感じです。
この小説はドラマ化されているそうですね。いつか借りて見てみたいものです。
「いちご同盟」でちょっとエッチなことを考えた人は、さっさと溜まったものを排出してきてくださいね。
この物語の主人公は、ピアノが上手で高校受験を控えている中学生です。ピアノなんて習ったこともないし、高校受験では落ちた人なんて皆無の公立高校を受験した私とは状況が全く違いますが、やはり私も思春期があったので彼の悩みを理解することは出来ました。
ええそうです。理解することは出来ました。これまで読んできた青春小説同様、答えの無い問題に対して私は理解するだけで解決策なんて思い浮かびませんでした。「主人公はここでこうしろ!」なんてことは私は言えるはずも無く、ただ彼の決断を見守っていただけです。
主人公は自殺もいいんじゃないか、と考えるようになります。そのきっかけは小学5年で自殺をした少年の遺書にある、
むりをしていて生きていても
どうせみんな死んでしまうんだ
ばかやろう
という言葉が主人公の心に大きな影響を与えました。
たかが小学5年の言うこと、とけなすことなかれ。このような問いというのはやはり哲学の中心にあるようなもので、これまで何千年も人間を苦しませてきたのです。この誰もが知っている問いに、私たちは誰一人明確な答えを出せません。
主人公はこれのおかげで、人生に対して何か諦観のようなものを持ったのかもしれません。彼は積極的に悩んでいるようには見えず、ただ、人生に諦めかけようとしているような、そんな危うさを私は感じました。そうなったのも、自分の希望というのは現実どおりにはならないという思いがあったからなのでしょう。
しかし、彼は出会います。病気で死が近づいてきている直美という同年齢の女の子と病院で出会います。そこに連れて行ったのは直美とはずっと幼馴染だった徹也です。
その出会いによって主人公は彼女のことを気にかけます。好きになっていたのです。彼女の死に対しての思いが、主人公を惹かせたのかもしれません。そして彼女も、死ぬほどあなたが好き、と最後に主人公に言います。
彼女のことを家族のようにも思っていた徹也は、彼女のことを一生忘れないように主人公と同盟を組みます。15歳の同盟、それがいちご同盟です。
主人公はあの問いに対して答えを出せたのでしょうか?それはこの作品中には出てきませんが、以前と比べて自殺をしようという気持ちは薄れていると思います。その理由は死んでいったものへの責任?それとも直美という人間が自分に残した何かのおかげ?
人が生きようとする意味は定かではありません。ですがそんな抽象的な中で私たちは生きているのです。あのとき抱いた私たちの悩み、それは結局のところ大人になった今の私たちにも十分通用するものだと思いました。
最後に、押し殺したような喘ぎ声って、何?
いちご同盟 (集英社文庫) (1991/10/18) 三田 誠広 |