まほろまてぃっく 総括

人間と人造人間
地球とセイント
優とまほろ
 この漫画は一見ただの萌え漫画に見えるのですが、人間のドラマや異なった者同士たちの関係などの、少し考えさせられるテーマがちりばめられています。
 
 今回はそんな人と人との関係について論じてみます。


・地球とセイント
 セイントは地球にやってきて、共存しようとしました。が、地球の管理者はそれを許さずセイントを追い出そうとしていました。地球のもう一つの勢力、ヴェスパーはセイントと共存するために管理者と戦っていました。
 同じ地球人でありながらどうしてこうも全く違う意見を持つようになったのでしょうか?
 管理者の言い分は、
「私たちが地球の管理者なのだから、イレギュラーなものを排除せねばならない。そうしなければ地球のバランスは崩れ、人類は新種の人類となる。それは健全な進化の妨げだ。」
といった感じです。
 第一印象では、彼らはただの神気取りのエゴイストだと思ったのですが、人類は様々な思想をもつことを考慮すれば一方的に非難することは出来ないのではないでしょうか?
 確かに彼らは暴力的で地球人に対してもセイントに対しても非道な行いをしていました。しかし、地球に勝手に入ってきて我が物顔で地球に住もうとする異星人がいると思いこんだのなら、少しだけその蛮行にも納得します。もし日本と日本人を愛している人がいれば、海外の人間は日本人よりも劣っていると思ったり、素行が気に食わないと思うでしょう。自分たちとは違うことを恐れ、警戒する。もし相手のほうが全てにおいて正しかったとしても、受け入れることは変化を意味し、自分がこれまでぬくぬくと暮らしてこれた生活と決別する羽目になるかもしれない。もしかすると異人がこの国の全てを変えてしまうかもしれない。
 と、このように異なったものを受け入れる人間の立場としてその心情を書いてみました。
 で、次にヴェスパーはというと、
「おだやかで心優しい、完璧な心の持ち主のセイントと地球人が一緒になれば、理想の世界を築くことが出来る。」
 こんな感じの言い分です。
 管理者とは対照的に、セイントを受け入れようとしています。ヴェスパーの設立者たちも最初は管理者の一員でした。そこで捕虜のセイントと交流することにより、セイントの素晴らしさに気づき地球とセイントは一緒になるべきだと考えるように至りました。理想の心を持つセイントと一緒になれば、地球人の持つ野蛮さは薄れ、人類がみなおだやかな心を持ち、戦争などの争いがなくなると考えていたのかもしれない。
 もしくは、ただ単に存亡を賭けているセイントを救いたいために、人類との共存をしようとしていたのかもしれない。
 両方の立場の言い分を書いてみましたが、正直言って、どちらが正しいかは私には決められません。どちらの気持ちも分かるし、どちらも地球のためを思って行動しているのかもしれない。
 まあナウシカなら、困っている人を全員助けるという理由でヴェスパー側につくかもしれませんが
・人間と人造人間
 人造人間は人に作られたからといって、人よりも下賎に扱われれなければならないのか?
 人造人間と人間には愛は生まれないのか?
 前者の疑問はみなわを、後者の疑問はまほろさんをみて思いました。
 まず人造人間の地位から
 ヴェスパーではアンドロイドのまほろさんを人間として扱っていましたし、みなわに対して邪険に扱うこともありませんでした。ヴェスパーでは異星人を受け入れるような人が全てですから、そのような自分とは違った人々には寛容なのでしょう。
 対して管理者では、人造人間を作り兵器として活用しようとし、役立たずだったものは消却処分していました。彼らは人造人間を完璧にモノとして扱い、人の権利など一切与えていませんでした。まあ、彼らは過激なナショナリストでありましたからそのような愚行を行っていたのは納得できます。許すことは出来ませんが。
 がじぇっとの感想でも書きましたが、機械と人間が共生できる未来、それこそが理想の世界。機械のような異なったものとでも生きられることが出来れば、この世界から戦争が無くなるかもしれない。だから、たとえ人に作られたものがいたとしてもそれと仲良く共生することが出来なければ、結局は人と人との共生すら出来ないのかもしれない。
 もし幸せな社会を作りたいのなら、機械だろうと人造人間だろうと、あらゆるものと共生していかなければならないと思います。管理者はただの神様仏様ではないので、自分のエゴを貫き通したいだけです。彼らは人々の幸せを願ってはいないのですから。
・優とまほろ
 優とまほろは最初、ご主人様とメイドの関係でした。その次は姉弟、最後には彼氏彼女の関係に。一番最初では、主人を正しい方向に導くためにエッチな本を見つけては叱っていましたが、いつしかそれが姉が弟を叱ったり導いたりするような関係になったのでしょう。管理者との戦いが始まるころには、優がもう守られるような存在ではなく、みんなを守るような強い存在となっていました。だからこそそんな頼れる人に、まほろさんは心惹かれていくようになったのでしょうね。
 最初はなんでこんな冴えなさそうな眼鏡男がもてんの?と思っていましたが、読み進めていくうちに理由が分かってきました。優は中学生とは思えないくらい、優しく、強く、正直で、頭がいい。そんな彼がもてないはずがあろうか?いや、ない。(反語)
 理想的と言えるような優とまほろさんのカップルですが、悲しい悲しい別れ方をしてしまいます。優の父が地球のために犠牲となって死んだように、まほろさんも地球のために犠牲となって人々を救いました。それからの優は、まほろさんの復讐を20年間続けることになります。ですが、運命のめぐり合わせというものでしょうか、優はまほろさんともう一度会うことが出来ます。それが最後の紫陽花の咲く庭のこと。
 彼らはご主人様とメイドの関係でもあり、アンドロイドと人間の関係でありましたが、恋に落ちました。それは異常なことかもしれません。しかし彼らは彼らの心に正直になり、ついにその恋を成就させました。その恋は邪魔をされる結果になりましたが、この二度目の出会いではそうはならないでしょう。彼らはついに何者にも邪魔をされずに、お互いに正直な心で愛を育んでいくのでしょう。それは長い長い遠回りをしたような恋路ですが、いいのです。そのおかげでこんな素晴らしいドラマを、読者に見せてくれたのですから。
1~3巻感想
4~6巻感想
7,8巻感想

漫画

Posted by YU