漫画版 ひぐらしのなく頃に解 目明し編 4巻感想&総括

雑記
 ずっと週末雨だから山にいけない。
 最近暑いから筋トレする気も起きない。
 このままでは夏の縦走がかなり辛いことになる。
 どうにかしなければ


4巻
もう引き返せない 最終巻です。罪滅し編ではかなり良い線まで惨劇回避まで行きそうになりましたが、目明し編は全く惨劇を回避できてない…。ただ綿流し編の裏を完璧に解説してくれただけでした。ちなみにここでは便宜上、本名が魅音のほうを詩音と書くことにします。
 詩音は悟史に危害を加えたり、雛見沢の暗部をつかさどっていると思える人間たち全てを殺そうとします。もうこの辺りからは悟史を救おうとしたり悟史の復讐をしようとしていた詩音とは異なってきています。言うなれば、ですね。悟史を想って行動する、ということから、ただ自分の欲望に従って行動するという風に行動原理が変わってきています。
 悟史を苦しめた一因ではあるが悟史の最も大切な家族である沙都子を殺してしまったときから、詩音は鬼婆を殺してしまったことによる自分の状況だけではなく自分の心情からまで後戻りできなくなってしまいます。「残ってるのは、心の底に満ちた、どろどろの鬼だけ」、自分にすら見限られた詩音の肉体に残るのは、殺人衝動に満ちた狂気しかありません。
 詩音は祟りが何なのかを突き止めてやろうとしましたが、その過程で自分が祟りとなってしまっていました…。その変わり目がどこかよくわからないのは、かなり物語として上手いですね。いきなり詩音が狂えば、「ひぐらしの狂気に犯されたか」と物語としてはしょうがないものか、と思えるのですが、変わり目がわからないので一体詩音は何が間違っていたのかと疑わざるを得ません。だからこそ同情の余地の無い詩音にすら、いくらか彼女の行動に納得できてしまうのではないでしょうか。
鬼にとりつかれた末路 詩音が同情の余地の無い殺人鬼になる、と決意した後に圭一の想いに感化されたときは、鬼がいなくなってくれるのではないだろうかと少し期待しました。が、最後の最後に今まで自分の行ってきたこと全てが間違いに気づいたときでも、詩音は狂気に従って行動してしまいます。もう彼女には後戻りできる余地なんて一切無いのでしょう、自分の立場や気持ち的に。
 最後に圭一を殺そうとしたことなんて、悟史とは全く関係ありませんからね。ただ魅音が妬ましかっただけなのに、それでも詩音は自分の殺人衝動を悟史への想いということに偽ろうとしています。いや、もしかしたら圭一が悟史の仇だというのは、悟史の愛する沙都子を殺した自分を狂わせた一因となったからという遠まわしな自虐だったのかもしれません…。
 
 圭一を刺した後、詩音の体からは鬼すらもいなくなったようです。詩音はこれまで自分が行ってきたことへの贖罪と、自分の本当の理想の世界を思い浮かべます。最初は悟史に会いたかった、幸せになりたかった。なのに一体どこから彼女は道を踏み外してしまったのでしょうか?全てを失った彼女は、マンションから落ちていきます。
 詩音の手記の最後は、この言葉で締めくくられています。
「生まれてきて…、ごめんなさい。」
総括
みんな、ごめんね 目明し編は全てにおいて詩音が主人公になっています。最後の大石のシーン以外全てが、詩音から見て感じたことが描かれています。物語の始まり、事件の第三者として、事件の第一人者として、舞台回し、物語の結末、その全てを詩音一人が演じきっています。目明し編の詩音の活躍を見ると、詩音はまさに波乱万丈の物語を全速力で走りきっています。
 この物語は詩音の心情を理解することを前提としたストーリー進行ですが、いきなりぶっ飛んだり考えになったりはしないので、考え込まなくても自然と彼女の気持ちを理解できていけるでしょう。詩音の悲しみ、寂しさ、喜び、辛さ、恋心、狂気。最初は綿流し編の魅音ぐらいに、悶えたくなるほどの詩音の悟史への想いがつらつらと描写されています。が、悟史を助けようと奔走しているうちに後戻りできなくなります。それから詩音は鬼への道を歩むことになります。
 今回の惨劇を防ぐのはどうすればよかったのでしょうか?もし詩音が最初に、祟りを行っている人間は鬼婆ですらわからないということがわかっていればよかったのでしょうか。魅音が最後にその事実を明かしてくれましたが、もうそのとき詩音は鬼にとり憑かれていたために、どうしようもなくなっていました。
 鬼、鬼、鬼。私は末期の詩音を鬼だと書いてきましたが、ここでいう鬼とは何でしょうか?同情の余地の無い殺人鬼で、人を殺すことにためらいを感じずむしろ快感だと感じる者?殺されるべきだと考える人間を本当に殺してしまう者?ある人間が殺されるべきだと考えたときからすでに鬼?
 言ってみればこの目明し編というのは、詩音を題材にした、人間が鬼へと変わる推移を描いた物語ではないでしょうか。人は誰もが内に狂気を潜めている、と聞きます。その狂気が理性を少しずつ侵していき、最終的には理性が無くなって狂気だけの存在となってしまうのでしょう。「ひぐらし」に共通するキーワードである「鬼」。それは狂気に犯されただけのただの人間の姿なのかもしれません。もしそうなら、鬼というのは空想の存在ではなく、今この瞬間ですら平和な現実を壊してやろうと私たちの中で燻っていると言えてしまいます。
 目明し編は言うまでも無くストーリーが良かったですが、それだけでなく絵も素晴らしい。ストーリーの臨場感を上手く表現してくれた方條ゆとりさんに感謝。ひぐらし作家の中ではこの人が一番緩急つけるのが上手いかも。あるときは読者を萌えさせてくれれば、あるときは物語の狂気を登場人物の顔や構図によって読者にダイレクトに植え付けさせてくれましたしね。末期の詩音の狂った顔を見ると、体の芯からゾクゾクしてきましたよ。
 ひぐらしはまだ続きます。狂った世界の中で鬼を滅ぼすことは出来るのでしょうか?
目明し編1~3巻 感想

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Posted by YU