茄子3巻 感想&総括
雑記
ものすごい田舎で純粋な村民の一人として生きるか、外国とか行って立派な人間になって生きるかのような、相反しそうな極端な想いが自分にはある。
茄子 (3) (アフタヌーンKC (314)) (2002/12/20) 黒田 硫黄 |
新装版 茄子 上 (アフタヌーンKC) (2009/01/23) 黒田 硫黄 |
新装版 茄子 下 (アフタヌーンKC) (2009/02/23) 黒田 硫黄 |
茄子
3巻
17,18話 「富士山の戦い」
2026年の富士山の火口基地が舞台です。その基地に茄子型の化け物がやってくるSFものです。
冒頭にこの話の設定を見ると、富士山の地熱をエネルギーとして利用し、かつ火山活動の抑制のため、15年がかりの計画で工事を行っているようです。設定としてはそこが面白かったですが、茄子の化け物に関しては突拍子なもののような感じがしました。
19話 「いい日」
高田の元に同級生の松浦がやってくる話。
松浦は宝さがしをやっている、ということですが、ある一人の女を芸能事務所に連れて行って、女が「やめたい」と言ったので事務所の金を二人で盗んだという過去を持っています。この話ではその報いとして、松浦は殺されてしまいます。
松浦の宝って結局何だったのでしょうか?物質的なもの?精神的なもの?松浦にとって、拾ってきた女はどのような存在だったのでしょうか?
20話 「茄子の旅」
あるトラックドライバーのトラックに一人の女性フィリピン人が同乗する話。
フィリピン人はどうして北に行きたがってたのでしょうか?その理由はよくわかりませんが、とりあえずお決まりのように金をせびってくる彼女に少々腹が立ちました。
21話 「一人」
高田の家に熊がやってくる話。
この話で重要な場面は、高田の夢の話でしょうか。高田は、寝ているときにだけ高田の元に訪ねてくる友達と起きているときに会うことが出来なくなったという、夢を見た?という話をしている夢を見たようです。複雑ですが。しかし実際に寝ているときにやってきたのは、熊だったという話です。
これは、つまり、熊が来たのは夢のような話だった?それともすれ違いを表しているということでしょうか?
22話 「考える人」
若隠居のためにインドにやってきた有野の話。
適当にブラブラするつもりだった有野が、現地の有力者に見初められたり事件に遭遇したりします。若隠居、というのですから彼は穏やかに密やかに暮らしたいのでしょうが、ずっとそうであるのはできないようですね。
ラスト、有野は若隠居について考えます。「自分にとってはどうでもいいことかもしれないな。わからなくなるもの。」つまり、若隠居しようとして隠居らしい生活をするように張り切るのは、本当の隠居とは違うのかもしれません。自然体で生きることが重要なのだと私は思います。
23話 「スーツケースの渡り鳥」
「アンダルシアの夏」のメンバーが日本のレースに出場する話です。
これの感想もアニメ版があるので、省略します。やっぱり、テーマは生きるために生きることなのでしょうか。
24話 「夏が来る」
最終話。登場人物の生活が変わっていくことを暗示しているようです。
貧乏人の高橋には宝くじで100万円が当たって絵を買おうとし、高田はサンフランシスコ大学で講師をやらないかと誘われています。他にも、大西は「新しいことを始めたい」と言っているし、高橋の友達の咲には赤ちゃんが生まれるようです。
テーマは「変化」?ゆっくりと日常が変わっていくこの話を、一番最後の話に持ってくるのは上手いですね。彼らはこの先どのような人生を送ったのでしょうか。どこかゆっくりとした雰囲気があります。ラストページでは高田の家にはもう誰もおらず、近くには茄子畑が広がっているようでした。
総括
「茄子」はオムニバス形式の漫画なのですが、全体的に見るとほとんどの話には働くことや生きることが描かれていると私は思います。働くことや生きることを描くのが作者の作風なのかもしれませんが。
茄子を読んで、私はいろんな働き方や生き方があるんだということを実感しました。金のために必死で働く人もいれば、一人で悠々自適に暮らしている人もいるし、みんなのために必死で働く人などなど。本当に、一人一人が違った考えを持って生きているようです。
「茄子は晴れた日を一日も無駄にしない」ように、人の人生も一日一日は無駄に思えても実は自分が変化を自覚していないだけで、本当はゆっくりと着実に人は成長していっているのかもしれませんね。
最初「茄子」を読んだときは物語や魅力がよくわかりませんでしたが、読み直すにつれて少しずつわかってきて、なぜか虜になっていました。最初はどこに魅力を感じたのだろう?と自分で考えるのですが、なかなかこの漫画の魅力を言い表すのは難しいです。と言っても、この漫画は面白くないというわけでは決して違います。
全体的に進行は淡々としていて、ジャンプ漫画のように感情が爆発することはほとんどありません。その淡々としているところにこの漫画の独特のテンポがあり、読者をそのテンポに引きずり込むような魅力があったのではないかと私は思います。
宮崎駿さんも支持しているこの漫画。決定的な面白さはないような気がしますが、それでも面白いという独特の漫画だったと思います。
1,2巻 感想