けいおん! 11話「ピンチ!」 感想&考察

1話1話でアニメの感想は書かない、と決めているのですが
正直今回だけは書かざるを得ない。
 前評判では「意味不明」で評判が悪かったのですが、理解が難しいということを踏まえて見れば面白いように理解できていきました。
 11話を違った見方で見たいと思う方は、是非私の考察も読んでみてください。
 自分が東京に住んでいたら、もう少しみんなで議論できたかもしれないが…
 名古屋はなんでこんなに遅れているのだorz


 まず、原作には無いこの話を理解するにはアニメの構成から考えていかなくてはならない。
 けいおん!アニメ版で13話構成で、13話は番外編、12話はライブ&最終回、11話はライブに向けてバンド名を決める、という流れになっている。ここで注目すべき点は、11話でバンド名を決めてライブに備えたこと、そして11話というアニメ的に考えて終盤になっているということだ。
 そしておそらく製作者がこの話で視聴者に伝えたかったことは、視聴者がすでに彼女らの性格を知っていることを踏まえたうえでの団結を描くことだろう。
 もとから団結していた彼女らを団結させる、というのは一体どういうことだろう?
 答えは簡単、次の話にライブがあるから。だがそれだけではない。バンド名を決めるということにも団結を描くのは必要不可欠なのである。団結を書く理由が二つもあれば描くのは必至だ。
 そもそも楽器をやっているものたちにとっては、バンド名を決めるというのはかなり大きいことなのだ。私が過去に読んだ、「グミチョコレートパイン」「青春デンデケデケデケ」にももちろん登場するし、重要なファクターになっている。少年たちは言っていた。
 「バンド名を決めるということは、自分たちは楽器をやっているよと社会に示すことであり、これからよほどのことが無い限り自分たちメンバーが増えたり減ることは無いということだ。
 たかがバンド名、しかしその中には決意と団結が含まれている。
 では団結を描くために、なぜあんなギスギスした雰囲気を描く必要があったのか?
 彼女らはすでに仲良しこよしで喧嘩なんてありえなかった。しかしそんな中で団結を描いても説得力が無いだろう。だからこそ構成作家さんは、あえて彼女らを喧嘩させることで一度離れさせ、そしてもう一度くっつきさせることで団結を視聴者に印象付けようとしたのだろう。
 
 次は登場人物たちの心情を考察していこう。
 心情を理解していくには、このアニメを11話だけでなくこれまでの話で彼女らの性格や、誰にどのような感情を抱いているかを知っておかなければならない。
 まず、澪と律の関係をおさらいしておこう。
 はおとなしめの性格で、それゆえに律によく振り回されてきた。だが律に対して劣等感を持っていたり逆らうことはしない、ということはない。律にツッコミ入れたりして彼女を引っ張っていく様子もあったりする。
 は明るい性格で、あまり後先や細かいことは考えないというような印象を受ける活発な女の子だ。澪をいじったりすることは多いが、そこに悪意は全く無い。
 そして二人ともかなり幼い頃から親友であった。つまり二人はお互いがお互いに好意を持っており、相手の性格も完璧に知っている。
 ではここからシーン別考察。
 始まりはけいおんメンバーで楽器店にやってきたときだ。澪は店に左手用の楽器がたくさんあったので興味津々。みんなが帰ろうとするまでずっと見ていた。しかし律が「早く帰ろう」と言うが、澪は「嫌だ」と言って聞かない。律が澪を引っ張ると澪がこけてしまい、澪は言う。「律馬鹿」
 この時点では律はいつもどおりなので、彼女の心情を考察しなくてもいい。問題は澪だ。なぜ彼女は少し本気で律のことを馬鹿と言ったのか?
 そもそも澪はこれまでわがままを言うような人ではなかった。律のわがままに振り回されてきてばっかりだった。だからこそ、澪は「自分だってちょっとぐらいわがまま言ってもいいじゃないか」という風に思ったのだろう。自分のわがままを許して他人のわがままを聞こうとしない律を不愉快に思い、あんなことを言ったのだろう。
 次は律の澪への嫌がらせだ。ここからは律の心情が問題になってくる。喫茶店で澪と自分の知らない人間が楽しそうにやっているのを見て無理やり割り込む。澪のトラウマや嫌いなものをわざと見せ付けてくる。
 律は楽器店のことで、「澪が自分のことを嫌いになってしまった?」と思ってしまう。だからこそ自分を無視して他の友達と仲良くしているのを見て、嫉妬や危機感を覚えたのだろう。
 澪への嫌がらせは、自暴自棄になっていたことと澪の興味を惹きたいということからだと思う。これまでずっと親友だったからこそ、その信頼が裏切られたことに対して憤りと嫉妬、そして絶望なんてものもあったかもしれない。
 しかし律はそんなことをやっている自分に対して嫌気がさしてくる。自分でも気がついたのだろう、澪がほかの子と仲良くしているのを邪魔したり単なる嫉妬から澪に嫌がらせするのは最低だってことを。このような思いから、律はドラムの前であんなに暗い顔をして、練習を抜け出したのだ。
 最後は律の部屋。律は上記のような思いから体調を崩し、風邪をひいて寝込んでしまう。自分は最低、という暗い思いは電気をつけずに薄暗い部屋で一人で寝ている律を見るとよくわかる。
 澪がお見舞いにやってきてくれる。律はそのとき本当にうれしそうな顔をして澪を受け入れる。「怒ってる?」と律が聞き、「怒ってない」と澪が答える。律は「寝るまで一緒にいて」と澪を引き止める。
 このシーンは言うまでも無く関係の修復が描かれている。律はやっぱり自分の親友でありわがままを聞いてくれるのは澪だけだと思い、澪はそんな一途でいとおしい律を見て母性のようなものを見せている。まあここらへんは考察しなくても直感で分かりますよね。
 これで考察おしまい。
 感想としては、個人的にはものすごく上手い構成だったと思います。ライブへの団結をこんな方法で見せてくれるとは思いもよりませんでしたよ。ロックバンドが好きな自分にとっては、ずっとゆるゆるな感じよりもこういうシリアス成分に飢えていましたからね。
 第二期あればいいのに…

けいおん! 1 (初回限定生産) [Blu-ray] けいおん! 1 (初回限定生産) [Blu-ray]
(2009/07/29)
豊崎愛生日笠陽子

商品詳細を見る

雑記

Posted by YU