超人計画 感想

 この本は「NHKにようこそ!」と「ネガティヴハッピー・チェーンソーエッジ」で知られた滝本竜彦のエッセイです。雑誌で連載していたそうです。
 この本のタイトル「超人計画」とは、滝本が超人となる計画だ。一体超人とは何か?どうすればなれるのか?それらの疑問や自分の逃避に立ち向かう、まさにこれはの葛藤を描いた自己啓発書である!
多分


 えー・・・この超人計画には滝本竜彦のこれまでの思い出や痛々しい私生活が綴られています。彼が引きこもった理由や禿げた理由、果てはドラッグでのトリップなんかも書かれています。そして脳内彼女、レイとの脳内会話や脳内イチャラブなんかも描かれていて、正直、気持ち悪いです・・・
 いや、もちろん笑えますよ?痛々しすぎて。
 ですがそのアホみたいなやりとりがなんとも面白くて、もしかしたらこの子がいなければ滝本はいつまで経ってもやる気を起こさず、ただボーっと生きていったのかもしれないと考えれば、彼には必要不可欠だったのかもしれません。
 脳内レイの口癖は「ダメ!ゼッタイ!」。もちろんエヴァンゲリオンに出てくる本物のレイはそんなことは言いません。無口なのが魅力の女の子です。ですが滝本は脳内レイの口癖をそう設定しました。なぜなら、自分のことを否定してもらいたいから。
 この本を読んでわかるように、滝本はいつもやるべきことから逃げています。三次元の彼女を作ろう!とか、小説を書こう!とか、働こう!とか。甘ったれてやる気を出さない無気力青年のけつを叩くため、脳内レイは毎日滝本に激励したり蔑んでみたり慰めてみたりします。まあそれでもやっぱり滝本は脳内レイにも逆らって、適当な言い訳で逃れるわけですが・・・
 滝本は逃避のために言い訳ばかりしている、そのような展開ばかりですがその中で滝本の人生観がわかってきます。それらの人生観は逃避のために利用されていると思いましたが、実際、滝本には逃避をして何かをするという気力も無く、ただ何をするわけでもありません。
 ですから、滝本は逃避というより何かをする意義を見出すことができずにいる、ということがこのエッセイの中でつらつらと書かれているのです。
 滝本は悩みます。一体自分は何をすればいいのか?どうすればいいのか?悩んで悩んで悩みぬいて、滝本は超人ロードを歩んでいきます。
 その道程で、ついに滝本は自分が持つ幻想全てを取り払うことになりましたが、そのおかげで脳内彼女のレイをも取り払う羽目になりました。でもそれでもやっぱりレイは帰ってきました。
 どうやら超人ロードは円環上であるようです。滝本の超人ロードをまとめてみると、
1,ルサンチマンをもつような妬み僻み感情を持つ人間になる
2,1から脱するため、彼女を作ろうとする。
3,でもやっぱりそんなの無理。自分のような屑人間がそんなことできっこない。
4,というか傷つくのも傷つけるのも怖い。自分の感情がいつかはなくなっていくのも怖い。
5,もう何をやっても無駄だ。どんな物語も人生もただの幻で意味なんて無い。
6,しかしその幻想を幻想とわかって愛することができたのなら、自分は超人だ。
7,夢も希望も何も無いから毎日を無気力に過ごす。
8,死ぬまで小説を書こうと脳内目標をでっち上げてへらへら小説を書く。
9,人生の意味なんて全て幻想だ。生きる意味も無ければ死ぬ意味も無い。神は死んだ。
10,滝本の神である幻想のレイがいなくなる。神は、死んだ。
11,やりたい放題やっても虚しいだけだと思う。
12,輝き滅すれば闇も失せる。全てが灰色の世界
13,もう何も望みたく無い。そんなことやったって無意味なんだ。他人の喜ぶような物事は、自分にとってゴミクズなんだよ!
14,これって妬み僻みのルサンチマン?レイちゃん帰ってくる。1に戻る。
 ・・・滝本の悩みはまだまだまだまだまだ終わりそうにもありません。彼の悩みは人類共通のものかもしれません。だからこそ彼の悩みは終わることなく、そして読者はその感情に共感したりすることができるのでしょう。
 でもそんなこと言ったら滝本の働かないことを肯定してしまうので、一ファンとして言います。
 早く新作小説を出版しろ!!
俺たちはずっとマッテイルンダヨー!
 滝本ガンバ。2009年中には新刊出してくれ。
 うつ病の人にこんなこと言ってはいけんけどね!

超人計画 (角川文庫) 超人計画 (角川文庫)
(2006/06)
滝本 竜彦

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Posted by YU