ナルキッソス 感想

narcissu(ナルキッソス)   制作 ステージなな
 2005年に公開されたフリーのノベルゲーム、ナルキッソス(1)の感想を書いていきます。
 wikipediaによると、全世界で100万回以上のダウンロードを記録しているようです。すごい!しかも、有志によって英語版や中国版なども制作されているようですね。
 
 このゲームに登場する、「淡路島の、水仙で有名な場所」にも行ったので、そのレポートも少しだけ載せております。


nar2.png ノベルゲームなので特にゲーム性というものは無く、イラスト、BGMと一緒にテキストを読んで物語を楽しむゲームです。音量調節、テキストの速度調節なども出来るので、ノベルゲームとして基本的なシステムは整っていると思います。
 ゲーム内にあるプロダクトによると、実はこのゲームの制作のコンセプトはこのストーリーそのものを書きたいというよりも、「プレイヤーにどれくらいの情報を与えれば、脳内イメージによる理想と制作者の物語伝達の合計が最大になるかを調べてみたい」ということのようでした(意訳)。漫画がアニメになると、「声に違和感ある!」などと、それまでの自分の理想が崩れてその一部においては魅力を最大に受け取ることが出来ないなどがあります。そういう、「脳内補完による理想」の概念を考慮して、このゲームは制作されたわけですね。
 文章の書き方としても、「台本のような最低限の言葉のみ」か「小説のような文章」のどっちがいいかということも考えられていたようで、本作ではボイス有り無しのみの情報選択でしたが、個人的にも文章の書き方はどっちが良いかという興味はあります。私個人の考えですが、台本のような文章なら人物の表情が上手く描き分けられたような絵が必要になるかと思いますね。そうすれば良質の、所謂「雰囲気モノ」になるんじゃないかと思います。
 一応ボイスありと無しの両方でプレイしてみましたが、う~ん…私にはどちらがいいか決められませんでした。 
nar1.png で、ストーリーですが、物語自体は短いので、プロットもまあ複雑なものではなく。が、登場人物、
特にセツミの最後の選択へと行き着く心情を考えれば、案外複雑なストーリーになっているのではないかと私は感じます。主人公の男はまあ、セツミと共に行動するだけの舞台回しかな。彼もそれなりには色々考えていますが、セツミにはもうその考えのほとんど全てをすでに経験したものだろうし。
 不治の病となり、死を待つだけの人たち。主人公もセツミも両方その病名などは書かれておらず、その分リアリティは少し低め。「明日地球が滅ぶなら」のような物語に近いかなと思います。
 セツミにも主人公にも、そういう状況なら予想されるであろう感情、「狂乱」とか「悲哀」などはあまり無いようで、ただ「空虚」な感じが出ていました。そんな彼らが行った、運命に対する小さな抵抗。かと言って、その抵抗にものすごい強力な意志が含まれていたなんてことも無く、やはり抵抗してもしなくても「虚しい」ことに違いはありません…。
 主人公は薬を盗んだり車を盗んだりしていましたが、そのような行動を見てもドキドキハラハラはしません。どうせその行為が成功したって失敗したって、彼らの運命に大した変化は無いということがすでに、わかっているのですから。
 表題「ナルキッソス」とはギリシャ神話に登場する美少年の名前であり、水仙の学名でもあります。そんな彼に恋をしたエコー。彼女は相手と同じことしか喋れないのでナルキッソスに愛を伝えられないまま消えてしまいます。そしてナルキッソスも、水面に映った自分しか愛せなくなり、そのまま水死。
 エコーもナルキッソスも、決して届かない憧れを持ってしまった結果、悲しい最期を迎えることになっています。確かに、最初からそういう憧れを持っていなければ最大の不幸を得ることも無かったのでしょう。だけど、死ぬことがわかっているから何をしても意味が無いし、楽しいものも無いというのは悲しいですよね…。そして悲しいということがわかっても、やっぱり、どうしようも無い。
 ラスト、セツミはやはりもう少し生きるか今死ぬかのどちらでも良い様な虚無感の中、自殺することになります。約3万5千人の中のたかが一人。だけどそれはただの「1」ではなく、水着を着たがっていたセツミという22歳の女性。確かに存在して、確かに人間として生きていた、そんな人。


淡路島・黒岩水仙郷探訪
 水仙の見ごろは1,2月頃のようです。このときちょうど淡路島を通る用事があったので、「こりゃ行くしかねーべ!!」
ということで、ナルキッソスラストシーンの舞台である黒岩水仙郷に行ってきました♪
 …ついでに寄っただけなので淡路島の他の場所は、全く観光せんかったがな!!
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 黒岩水仙郷は淡路島南の海岸線沿いにありますが、海から一気に山がせりあがっているので、意外にスイスイとはたどり着けない場所にありました。超断崖です。
 断崖にある観光地なので駐車場もそんなに広くは出来なさそうで、誘導員が車を誘導しているようでした。駐車場に入る前に入場券を購入。大人一人500円。
 他のお客はご老人や幼児が多かったです。私みたいなオタク野郎は…やっぱり少数派ですね。
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 ちゃんと水仙見頃に行ったので、ほぼ水仙はほぼ満開でした。遊歩道にいると水仙のかぐわC!香りが何ともかんとも私の鼻腔を刺激し、「ふぇえぇ…」となりましたよ!(意味分からん)
 
 水仙群生地は平地にあるのではなくて険しい尾根上にあり、面積自体はそれほど広くないかも?「ナルキッソス」ではもっと平地にあって、車に乗っている状態でも間近に水仙を眺めることが出来るというイメージがあったのですが…、やっぱりゲームにするにあたって少し改変したのかな?
 しかしここの何がすごいかっていうと、他の尾根では普通の森林になっているのに、ここだけ水仙が咲き誇って見晴らしが良くなっていることなんですよ。そして険しい斜面と水仙と海の対比が行えるという、こういう特異性こそがこの場所の売りであり、普通の平地の水仙畑とは違うところですね!
 実はここの売店にゲーム「ナルキッソス」のセツミのポスターがあったのですが、私がヘタレだったせいで写真に収めること能わず…
 まあ、友達少なそうなやつがニヤニヤしながら萌えポスターっぽいものの写真撮るのなんて、レベル高いですよね?
 そういやあこれが私の人生で初めての「聖地巡礼」となったのかな。意外に面白かったな~。

フリーゲーム

Posted by YU