週刊石川雅之 感想
週刊石川雅之 作 石川雅之
「もやしもん」で有名な石川さんが描いた短編集の感想を書いていきます。
もやしもん執筆開始少し前の、2002年から2003年にかけてモーニングで掲載された漫画たちのようですね。
週刊 石川雅之 (モーニングKC) (2003/02/19) 石川 雅之 |
作画はもやしもんとほとんど変わらないクオリティです。どの作品もトーンは使用されておらず、緻密な線の描き込みによって陰影や立体感を醸し出す作柄は全く変わっていないかと思われます。
さて、各ストーリーですが、クセやひねりのある作品が多く、他の作家の短編集と比べてもかなり特殊なものが多かったと思います。特に最初の「彼女の告白」なんて、息子が娘になって帰ってきたという冒頭の設定だけでも変なのに、さらにその上を行く異常な展開になってきますからね。まず最初に度肝を抜かれましたよ。
他には「仮面で踊ろう」も、非常識な展開でしたわ。普通、ヒーローが家族などに正体をばらすと、ものすごく驚かれたり「それでもあなたはあなたに違いないわ!」とかそういうドラマになったりするというのに、「むしろそっちで良かったわ」というように安堵するとは…、逆にお父さんが驚くってーの。
コメディ調だったりする作品が多いですが、たまにコメディの中に余韻があったり切ない感じが一貫して続くような作品もあって、深く読んでも面白くて良いですね。
コメディと余韻の両方を持つ作品としては、「WILD BOYS BLUES」が好きですね。かつて殺し屋として修羅場を潜り抜けたやつらの、一般人に戻った20年後の姿を描いています。格好良かったやつらが今では見る影も無いようになっているのは笑えますが、平和的な回顧や懐かしさを感じる様子は、見ていてものすごくほんわかする印象があります。今となっては良い思い出、人には現在だけでは推し量れない過去の魅力なんかがあるようにも思えましたよ。
他には「フランスの国鳥」も、よくよく読めば少し切ない感じもある、バランスの良い作品でした。幼い頃に抱いていたような距離感とか、冒険に出ることによる日常の再確認とか、そういうの好きです。
情緒のある感じが一貫していたのは、「ただそれだけで」とか「バス停」とかですね。目新しい展開とかはまああまり無いと思いますが、空気が良いです。しみじみして切なかったり、でも明日また頑張ろうと思わせてくれる作品でしたよ。
そんな感じで、色々な展開と色々なテーマがあり斬新なこの短編集は、読み応えも
あるオススメの一品だと思います。