双翼の大地 感想

双翼の大地
 エジプトマニアの人たちが作った、エジプトフリーゲーム3部作のトリを飾る、双翼の大地の感想を書きます。
 前作の「神々の呪文」と「灰色の町の守護者」はツクール2000で作られていましたが、今作はツクールXPで作られており、そのせいで雰囲気は異なっています。
 ちなみに、このエジプト三部作は、「みんなにエジプトに興味を持ってほしい」という目的で作られており、ゲームを作ること自体が目的ではないので、これ以降はもうゲームを作ることは無いそうです…。こういう、異文化を学べてかつ個性のあるゲームは少ないので、個人的には残念です。

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(2010/10/30)
地球の歩き方編集室

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souyoku1.png 前々作の「神々の呪文」はある書記の物語で、前作の「灰色の町の守護者」はある小さな神の物語でした。前二作は基本的に主人公の周りの町や人間たちの物語でしたので、RPGとしてはスケールは小さめでした。
 しかし今作「双翼の大地」は、前二作とは違っていて、スケールは大きく、古代エジプト全土を舞台にしています。さらに、人と神を繋ぐ「王」がテーマとなるし、主要な神々も総出演となるので、前二作を包括すると言うにふさわしい壮大な物語となっています。
 主人公は、二人。下の国と上の国、それぞれが舞台となります。勤勉な書記だったメルウェル、異人の血が流れるがこの国で生まれ育ったアジール。境遇の異なる二人が思い描く理想の世界を、見ていくことになります。
 前作とは進行や戦闘が大きく異なっています。
 おおまかな流れとしては、上の国と下の国それぞれで州都を訪れて条件を満たすことで仲間を増やしていくことになります。その条件というものには、ミニゲームだったり主人公の能力だったり戦闘だったりなどで、様々です。RPGによくある「おつかいイベント」っぽいのですが、それほど戦闘重視ではないので、サブイベントを見ていくというような感じで楽しめます。アドベンチャーゲームのような進行、だと思えば良いかも。
souyoku2.png 戦闘は、個人戦闘と軍戦闘に分かれています。個人戦闘は敵と一対一の戦闘であり、軍戦闘は今まで仲間になった街が加わる、規模の大きな戦闘です。軍戦闘自体は普通のRPGっぽい戦い方なのですが、戦争シーンでは主人公達が頭の良いような軍の配置や戦い方をしてくれるので、結構燃えます
 主要な神々が数多く登場し、町によって信仰する神が異なるので、いろんな町の人々からいろんな神の特徴を聞くことが出来ます。何の守護神だとか、何が好きだとか、どのような性格だとか。一神教の超然とした神々ではなく、少し人間くさいところが多かったりするので、結構親しみやすいです。ゲームにはいろんな供物が登場するのですが、神によってそれぞれ供物の一つ一つに反応するのには驚いた!この作りこみはスゲェ!
 で、ストーリーですが、今作は「王」という単語がよく表れるので「王」の物語かと思うときもあります。しかしおそらく、それは違うと思われます。一応「エジプト風RPG」なので古代エジプトの中で重要な立場である「王」と登場させたのでしょうが、物語としてはやはり、境遇の違う二人の青年の願いというものがメインだと思います。
souyoku3.png メルウェルは、頭の良い書記ですが、どのように行動すればいいのかわかっていても、行動力が無いので行動の出来ない臆病者だと自分で言っています。そんな、失うのが怖いような彼が、いろんなものを守るために人々の上に立つことになります。
 アジールは、東の荒野から下の国に流れ着いてきた異人の末裔、といった感じです。髪の毛の色などの外見がエジプトの人々と異なっているので、他の異人ともども差別されながら生活してきました。エジプトの人々にあまり良い感情を持っていない彼ですが、「王」が持つべき剣を拾うことで大神殿の神官に興味を持たれ、仕事を行っていくにつれて人々から信頼を得て「王」に持ち上げられていきます。
 メルウェルが王になろうとするのは、結構わかりやすいです。しかし、アジールが王を目指すことになるのは、人間の微妙な心情の揺らぎによるものなので、興味深いです。
 最初、アジールは「自分が生きるため」にメンフィスから与えられた仕事を行っていきます。いつも「よそ者」として扱われてきたのであまり人々を信用していなかったのですが、上に持ち上げられるにつれて、「自分の居場所」というものを自覚し始めていき、結果として王を目指すことになったようです。
 ラスト、メルウェルは大切なものを守ることを、アジールは人々が生きられることを願って、戦います。が、最後はお互いの願いの根本が同じということに気づきます。
 ラストの演出は音楽の効果も相まってか、なかなか燃えましたよ。OPと同じシーンがラストバトルとなり、OPで予想された結末とは違う展開でしたからね。
 根本的には似たような願いを持つ青年同士が戦うことになってしまうのは、何とも切ないものです。戦争というものはやはりそれぞれが正義を持っているのであって、戦争を行う人間が全て本当の悪人とは限らないですよね。お互いが平和を望んでいても、戦争になってしまう…。
 そんな、正義と正義の戦いを、メルウェルとアジール若者二人は止めようとします。今までのエジプトの歴史を考えれば、神でさえ行えなかったことを人間が行おうとするという壮大な決定には、身震いするような感覚がありましたよ。
 総括すると、今作は前二作よりスケールが大きく、いろんな町や神々が登場し、「王」に求められる条件など、古代エジプトを語るには欠かせない大局的な動き表現したゲームだった思います。
 まあ、その分前二作よりもエジプトの人々の生活感の描写が減ったかな?
神々の呪文
灰色の町の守護者


やりこみ記録★
・全都市と同盟
・全神の友好度MAX
・全軍のレベルMAX
・全アイテム入手
・アジール、メルウェルのレベル出来るだけ上げた
 作者さんのサイトの「攻略情報」に、ピラミッドの敵は何度でも復活する、と書いてあったのに復活しなかったからアジールのレベルが8までしかいかなかった!現れた敵全部滅してきたので、これが限界か?メルウェルのレベルは、ワニが出てくるダンジョンの敵が何度も復活したのでそこでレベルMAXにしました。

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Posted by YU