Library of Ruinaの感想――ディストピアの中で踊る人間たちの群像劇
2021年にProject moonから発売されたストラテジーゲーム、Library of Ruina(ライブラリーオブルイーナ)をプレイしたので感想を書きます。
プレイのきっかけはもちろん、前作のLobotomy Corporationが非常に気に入ったから。
前作からシステムがかなり変わってしまったのが当初は残念でしたが、結局プレイ時間は前作を超える140時間。
全滅回数・リトライ回数自体は前作より少ないはずなんだけど、凄いボリュームになりました。
世界観の掘り下げも非常にしっかりとしており、この物語以外の都市の物語を想像する余地もある、創作心を刺激されるゲームでもありました!
実績
全実績制覇!
ストーリークリア自体が難しいし時間がかかるので、最も難しい実績はゲームクリアとなりそうです。
次に難しいのは、戦闘表象100個集め。
やつらをもう一度倒すことになったので、とあるページでとどめを刺す実績も、個人的には難しいものでした。
なお、「致命的な一撃(一撃で150以上のダメージ)」ですが、自分は掃除屋相手に、ゲブラーを覚醒させ、気合3連続、敵を混乱させて、大切断-横をやってやると、324ダメージ叩き出しました。
ゲーム間違えてる数字だよ、これ!(普通だと30ダメージくらい)
バトル(接待)について
慣れるのマジ大変。
と言ってもゲームデザインもかなり巧妙なproject moon、適当なバトルでもどうにかなるほど序盤は簡単で、しかし徐々に難しくなっていくパターンです。
新しいギミック、新しい効果も戦闘の度に毎回出てきて、中盤以降は頭を使わない戦闘は一回も無いと言ってよいでしょう。
中盤(都市疾病)くらいで、ゲームシステムをちゃんと理解するために序盤の戦闘をやり直して実験を繰り返したりもしましたよ。
難易度のバランスは素晴らしいんだけど、応用編の詳しい説明がゲーム中でほぼありませんから、前作同様実際にプレイして覚えるタイプです。
基本的に敵の攻撃を把握してからこちらで対応するから、それだけ見れば優位であるはずです。
しかし初戦の敵はこちらより強いページを持っているから、そんな強いページを今までに登場したページの相性でどうにかしていく、ってのがこのゲームの基本です。
戦闘攻略メモでもここに書こうかなと思いましたが、攻略wiki参照したほうが早いですね。そうですね。
どの敵もギミックがあって、共通する攻略方法ってのが少ないからなあ~。
とりあえず、戦闘が長引く終盤ほどリソース(光やページ補充)大事、中途半端な攻撃で負けるくらいなら最初から負けて一方攻撃する、優秀なコアページは限界まで収集してから次に進む、と言ったところか。
帰属も色々ありますが、1だけ余るなら序盤の電気ショック入れておこう(最後まで)。
難しい接待も書いておきましょうか。
個人的には、以下3名の接待が(クソ)難しかった!
- 赤い頭巾の傭兵:強力な敵のマッチ管理と、時折双方からやってくる広域攻撃に疲弊。とどめの刺し方も考えないといけなく、何回もやり直して最も時間のかかった接待となった……
- シャオ:暴力的な攻撃・反撃・広域攻撃、そしてタフさ。初回は逆鱗のギミックを分かってなかったのになぜか初戦突破できたが、2戦目以降は負け続けて大変だった。
- 虚無の道化師:完全開放戦、あの長期戦最終戦。1,2幕目はよくわからないから警戒していたら、敵が黄金の道を使い続けて全滅……。こんなに時間かけて進んだ挙げ句に初見殺しのようなギミック、俺の気持ちを知っていただけるか!?
設定について
前作Lobotomy Corporationでは、あの閉鎖的な施設の外についての設定はところどころに撒かれている示唆を統合してようやくぼんやりと分かる程度でした。
しかし今作Library of Ruinaでは登場人物が前作より非常に多いし、セリフも多い(ついでに一枚絵もかなり多い)ので、「都市」とは何たるかを(前作に比べれば)容易に理解することが出来たと思います。
まあその分説明が多すぎてテンポが少し悪くなっている部分も……いやこれは個人の好みによりますか。
信じられるものが無い、殺伐としていて地獄の沙汰も金次第、狂った人間が様々でもはやマトモが何なのか分からない。
初っ端から人間の臓物が平然と出てきて、生への冒涜とかそういう言葉言い飽きそうなくらい、エゲつない設定ばかり。
「ああ、これが現代韓国の闇か~。あんな苦痛に満ちた韓国だからこそまるで苦痛の絞り汁や結晶のような素晴らしい今作が生まれるんだなあ」と無責任に思いますが、まあ現代日本に蔓延る雰囲気も内在していると、ふと思う。
社会が高度化し、技術や制度が人間を凌駕し、生身の人間1人では何一つ上手くやれないほどになった。
でもあれほど人間を食材や材料に使うというのに、少子化は起きてないんですかね?
ネズミのように増えていくシステムでもあるんだろうか。
project moonの性癖趣味でもあるんでしょうが、スーツ姿の異形頭がいっぱい出てくるのも、刺さる人には刺さるでしょう!
日本のスーツ異形頭と言ったら映画泥棒ですが、あれも良いよね……
また、音楽も非常に良かったですね!
前作も良かったですが、今作は曲数も増えて好きな曲を選ぶのも大変。
機会があればサウンドトラック買わせてもらおうかな!
ストーリーについて
図書館にやってくるゲストは一人残らず殺して本にしてしまうので、序盤から終盤まで一貫して登場するキャラクターは案外少ないのが今作。
しいて言えばやはりローランとアンジェラ、この二人を追っていくのがこの舞台の演目です。
ローランは典型的な「ヤレヤレ系」で、日本以外のゲームでこういうのが登場すると非常に親近感が湧きます。
ティファレトちゃんの昔懐かしい暴力ツンデレヒロインぶりもな!
司書同士の掛け合いも増えて、小話では陰惨な本編とは違って和やかな雰囲気なので癒やされました。
司書たちの個性も立っていて、キャラゲーとしても非常にレベルの高い作品となっていたことでしょう。
とりあえず女子勢には「バチバチビリビリ」の表象を付けるのをオススメしておこう。(マルクトはギョンミのコア)
さて、人間性や尊厳なんて下水溝に流したような都市の設定とストーリーですが、だからこそ本物の人間性を表しているかのような感情(EGOやねじれ)を根幹にしたこのアンビバレンスが!project moonの真髄(ヤクソクウ!)だと!言えるでしょう!
あらゆる不幸が起こり、諦めて何も期待しない、ちっぽけすぎる個人では何も望み通りにはならないし、上に行ったって別の上の存在に縛られるだけ。
「それはそれ、これはこれ」で片付けざるを得ないのが、都市の人々である。
無闇に苦しまないように感情を捨て、死んでいるかのように生きるだけ。
そんな中、少しでもより良くしていこうとしたのが、前作のC。
人々が感情を捨てずに、人間らしく生きていけるようにと。
一笑に付されるような理想論ですがアンジェラの100万年が費やされてようやく前作で叶い。
そうそう、前作の一時停止とかの機能ですが、あれは多分アンジェラがやってたんでしょうかね?
感情の発露は人間らしさを表す良いもの、だけではなくて「ねじれ」も生みました。
ねじれとなっていく1人の男の道程は丁寧に描かれており、あの行くも引くも地獄なダブルバインドはまさに苦しみですよ。
ねじれなんて奇妙な名前ですが、肉体的にも精神的にも正しいからしょうがない。
感情、生きることは、度々合理とは程遠くなります。
悪い結果になると分かっていてもやるし、殺されると分かっていても助けてしまうこともある。
「それもこれ、これもそれ」
という言葉は、そうでしかないと決めつけずに世界の可能性や広がりをも表すかのような言葉になったことでしょう。