シスタージェネレーター 感想

シスタージェネレーター 沙村広明短編集   
作 沙村広明
 2009年にアフタヌーンから発刊された沙村広明さんの短編集、「シスタージェネレーター」の感想を書いていきます。
 短編の掲載誌はアフタヌーン以外に、同人誌とか麻雀誌とかもあるようです。まあ短編集というものは、色んなところからかき集めてくるもんですがね。
 シリアスものからギャグものまで、日常ものからSFものまで、ジャンルは幅広いです。


 短編は、全部で7編です。
・娘と父親と家政婦3人の物語、「久誓院家最大のショウ」
・自称情報弱者の作者が頑張って描いた女子高生のだべりもの(?)、「制服は脱げない」
・不幸な少女は登場するけどあまり悲壮感を出していない、「ブリギットの晩餐」
・あざとい女子中学生と男の生活を描いた、「シズルキネマ」
・作者のある麻雀経験、「下層戦略鏡打ち」
・音楽とエロ(?)の、「青春じゃんじゃかじゃかじゃか」
・小気味良い西部劇、「エメラルド」
 
IMGP5011.jpg 「久誓院家最大のショウ」では、最初は子離れできない父の可笑しさを描いたり、娘の家政婦への嫉妬を描いたりするだけの物語だと思っていたのですが、終盤は圧巻です。
 「にわかのSにはドン引きされ、本物のSには尊敬される」と評価される(?)沙村さんですが、意外にドMを描いたのはこれが初めてだそうな。でも単なるSとMの関係だけで終わらないのが、この話だと思います。
 父はガンでしたがそれを娘に言わなかったのは、娘に同情されたり優しくされたりするのは嫌だったから、なのかな。だから娘は父が死ぬ間際まで女王様を演じきったのでしょうね。父の死後に涙を流しているシーンも印象的です。
 最後のコマに父の戒名、「久誓院一僕芳郎信士」が彫られているのですが、ちょっと調べてみると、『僕』は戒名としては侮蔑的意味を持っているようです。ということは、最後の最後、墓に入っても父は自分の被虐嗜好を満たそうとしていたのかもしれませんね。
 「シズルキネマ」では女子中学生が登場しますが、萌え漫画とかだと普通なのかもしれませんが、沙村さんがあざといキャラを描くと、違和感がありすぎて全身かきむしりそうですわ!うわああ!!
 と感じていたら、ラストは記憶操作・妄想オチ(?)でした。そりゃまあ男にとっては(おそらく)あんなあざと可愛い女子中学生とエロいこともしながらの生活だなんて理想の人生の一つかもしれませんが、それでも「本物のシズルが良かった」みたいなことを言っているのには、感慨深いものがあります。
 何だろうかな、現実の世界と違って創作物の中の世界は如何様にも理想的に出来ますが、それでも満たしきれない何かがあるような、そんなことを感じました。
IMGP5012.jpg 「エメラルド」は、かなり正統的(のようにに見える)で、物語として『上手い』、西部劇でした。
 構図やコマ割にもかなりこだわっているようで、銃一本あれば一瞬で終わる、あの世界観を見事に漫画で表現出来ているような気がしました。
 力も味方も無い少女の知恵と、賞金首の力と英雄の力を合わせて、悪どいことをやって勢力を伸ばしている組織をぶち壊す物語。また、出てくるやつらがほとんど全員ハードボイルドで渋いやつってのが超かっこいいです。私のイチオシはバーテンダーですが、あのかっこよさは無類です。ああいうキャラもっと出して欲しいな~。

シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンKC) シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンKC)
(2009/09/23)
沙村 広明

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Posted by YU