リセット、ヘウレーカ、ブラッドハーレーの馬車 感想

雑記
 デジカメとパソコンをつなぐUSBケーブルが壊れたかも。
 新しいUSBケーブル買おうか、と思って公式サイト行くと、販売終了だった…


リセット
あなたの人生は失敗しました マンホールやダズハントの作者、筒井哲也さんの作品であるリセットの感想を書きます。
 今作も筒井さんらしい、少し病んだ雰囲気の暗い作品となっていますがやはり面白いです。他2作品と同じように現代を舞台にして、ただの勧善懲悪では済まされないようなストーリーで複雑な現代人の心理を描いているようですね。
 あらすじはというと、ある団地の住人のみがプレイできる、(漫画内の)現実の団地を舞台にしたリアルすぎるゲームが関わる怪死事件から始まります。そのゲームをプレイしていた夫が現実で自殺をしたことをきっかけに、そのゲームを調査している喜多嶋という男と一緒にヒトミはそのゲームの調査を手伝うことになります。
 そのゲームの名前は「ディストピア」。その世界では人々は自由に人を殺したり自殺できたりします。現実にはもちろん武器なんて落ちていませんが、その世界には強い意図を持って武器が効果的に配置されています。例えば、公園の砂場には対人指向性地雷クレイモア、リーマンが会社から帰宅する夕方ごろには駐車場に対戦車無反動砲グスタフが備え付けられるようになっています。あらゆる殺し方を楽しむゲーム、それがディストピアです。
指定配置されている… ディストピアの世界は団地内だけの空間ですがかなりリアルに出来ており死に方なんかもそうなので、始めてそのゲームで死亡したヒトミさんは吐き気を催したほどです。このようなリアルな世界は現実と混同するほどの影響があるので、結果、現実が本当の現実だと思えないプレイヤー達が次々に自殺して今の世界がゲーム内か現実かを確かめるほどでした。ヒトミさんも、リンゴの皮を剥いていた時に使った果物ナイフが、武器として指定配置されているように感じて無意識に手首を切ってしまう羽目にもなります。
あなたの人生は失敗しました。リセットしてください。
 ヒトミさんの目の前にこのメッセージが出て時は、最高にゾクッと来ましたよ。物語冒頭の自殺はこうやって起こったのか。
 ディストピアの意味は、ユートピアの対義語であり極端な管理社会として描かれていることが多いです。デスノートの月が作った理想郷もディストピアですがそこでは犯罪や戦争が極端に少ない世界となっています。
 対して、この「リセット」のディストピアはあらゆる犯罪が推奨されているようなもので、一見自由すぎるだけの世界に見えますが、このゲームの製作者が意志を持ってプレイヤーを殺そうとしていたことを考えると、人殺しや自殺をするように管理していた世界であったということでしょうか。
 これまでに読んだダズハントやマンホールのように、この作品もコンパクトかつ濃密にバランスよくまとまっていたと思います。筒井さん、もっと漫画かいてくれないかなぁ~。
 
ヘウレーカ
惨殺 寄生獣、最近ではヒストリエで有名な岩明均さん作のヘウレーカの感想です。
 雪の峠・剣の舞のように、この作品も1巻だけで終わる短編となっています。ウィキペディアで見ると、この作品は「マルケルス伝」にあるかなり短いエピソードをモチーフにして作られたそうです。しかしかなり読み応えのある面白い作品となっていると思います。
 妙にモテるダミッポスという変な名前のスパルタ人の男が主人公となっています。ちなみ物語の舞台はシラクサというイタリアの先の島にある街です。時代は紀元前の古代ローマが健在だったころです。シラクサはローマの植民都市でありローマ人がまあまあ住んでいますが、このときに地中海対岸のアフリカ大陸にあるカルタゴが、ローマ攻略のためシラクサの独立派を扇動します。独立派によってシラクサに住んでいるローマ人達は捕らえられていき、ダミッポスの恋人のクラウディアも捕らえられることになります。ダミッポスは恋人を救うため、シラクサ独立派のリーダーであるエピキュデス将軍を手伝って、シラクサを再攻略しようとしているローマ人を退却させようとします。
レクイエム 歴史漫画なのであらすじがかなり長くなったな…。とりあえず、この漫画の魅力は次々と出てくる天才科学者アルキメデスの生んだ兵器でしょう。紀元前の時代とは思えないほどに巨大な
兵器が出てきて、軍隊を蹴散らしていくのは圧巻です。特に「エウリュアロスの車輪」のような蒸気機関を利用した兵器があったことはかなり驚きでした。アルキメデスがもう少し生きていたりしたら、産業革命は2000年近く早まったかもしれませんね。
 
 この漫画は歴史と知恵の面白さが際立っている作品でした。しかしラストシーンの、恋人の大好きだった塔の弱点を敵に教え、恋人の好きだった街を敵に陥落させるという寂しい葛藤はドラマとしても良かったですね。
 しかし、なんでこう、歴史作品って熱意と感動が含まれているのにどこか、どうしようもなく寂しいんだろうか。
ブラッドハーレーの馬車
パスカの羊 各所で「鬱」とか「グロ」とか「ウボァ('A`) 」とか言われまくっているブラッドハーレーの馬車の感想です…。
 時代は第一次世界大戦頃とは思いますが、これは実際あったことを漫画にしているのではないですから時代考証や場所の特定なんかは無意味らしいです、作者が言うには。まあ、この作品がノンフィクションではなくフィクションであるほうが個人的にはよっぽどいいですから、安心しました。
 この漫画は同じような状況を舞台にしたオムニバス方式で描かれています。物語ごとに出てくるキャラクターはほとんど変わり、キャラクターごとの苦悩や決意などが描かれていきます。そしてほとんどの話に馬車に載せられている少女が描かれています。
 1話では馬車に乗せられた孤児院の少女たちがどこに連れて行かれ、どのような目にあうかを読者に説明するためのような話でしたが、それがかなりショック受ける内容です。2話もはものすごい鬱とグロでしたが、それ以降は直接的にそのような描写は出てこなくなります。地獄へ連れて行かれる少女達を見送る形で終わるようなことが多いようでした。何も知らずに、ただ栄光を夢見ている無垢な少女をね。
少女達の思い なんかこう、家畜に一撃を与えて気絶している間に解体していくような、読者にショックを与えてから人間的な感情を伝えていくようなストーリー進行だったようでした。
 この漫画の最も見せたかったものは、少女達の儚い感情や全てを知っている周りの人間達の感情だったと思うんですね。あのグロテスクなシーンではなくて、もっと文学的雰囲気をかもし出したかったように思えます。しかし、やっぱり読者にはあのシーンが印象に残りすぎてしまいますね。いや、だからこそ少女達へ絶望に似た想いを持つことができたのでしょうか。
 ブラッドハーレー家の養女となって劇団に入り幸せになるために、汚い手を使ってでも選ばれようとする孤児の女の子のエピソードは特に、儚いような切ないような感じを受けました。友を蹴落として馬車に乗ったとしても、たどり着くのは汚い欲望を吐き出される相手となる地獄です。
 物語の終末で、この地獄は無くなる訳ですが、それでも後味悪すぎです。終わってしまっても「何かがおかしい」感じで、ハッピーエンドとは程遠いです。

リセット (ヤングガンガンコミックス) リセット (ヤングガンガンコミックス)
(2005/05/25)
筒井 哲也

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ヘウレーカ (ジェッツコミックス) ヘウレーカ (ジェッツコミックス)
(2002/12/19)
岩明 均

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ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS) ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)
(2007/12/18)
沙村 広明

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漫画

Posted by YU