恋ヶ窪ワークスLTD 感想

2020年4月23日

恋ヶ窪ワークスLTD  作 大森しんや
 前作に恋ヶ窪ワークスがあるのですが、今作はその外伝的な話になっている感じかな?前作は前作で、物語にちゃんと区切りはついていましたし。
 この恋ヶ窪ワークスLTDには恋ヶ窪ワークスのいくつかの話と、大森しんやさんの書いた短編が載っています。比率的には短編のほうが多め。短編は大森しんやさんが今までに描いた漫画の(おそらく)全てが載っているようです。

恋ヶ窪★ワークス LTD[版]―+大森しんや短編集 (Motor Magazine Mook) 恋ヶ窪★ワークス LTD[版]―+大森しんや短編集 (Motor Magazine Mook)
(2008/09)
大森 しんや

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img004_20110922174720.jpg では感想に移りますが、まずは5話ある恋ヶ窪ワークスLTDです。基本設定は前作恋ヶ窪ワークスと同じですが、物語が直接一貫して繋がっているというわけではない感じ。恋ヶ窪での生活、得たものを全体的な視点で描いたようだと私は思います。
 大嫌いだったこの町にも大事な人が出来て、「自分の居場所」となったという感じでしょうか。前作最初でアヤメが自殺をしようとしていたのとかなり異なっていますね。自殺をしようとしていたのは、今のような「自分の居場所」がなかったからとも言えましょう。
img007_20110922174719.jpg さて、次は大森しんや短編集に移ります。かなりいろんなジャンル・場所があって、どれも個性的な感じです。共通点はやはり、バイクが登場すること。物語中のバイクの役目も様々で、ただの小道具でしかなかったり、バイクに人生をかける人間が出てくるほどバイクでないと駄目な話もあったり。まあしかし、基本的に人間ドラマが中心です。
 「バイクは最高だ!やっほーい!」というような、100%バイク賛美、バイクバカな感じの話はおそらくありません。どの話も、どことなく切なかったり、心が温まるようなものだったりするなど、心に浸み込むような物語が多かったです。
 しかしでも、切なかったり硬派だったりでもないような話である、「夏のサクラ」は個人的にお気に入りです。妙に明るくて、作中の幸せな雰囲気が読者にも伝わるようでしたよ。
img008_20110922174718.jpg 硬派な話、「100 MILE HIGH」もお気に入り。何のために走る?というライダーの根本的な疑問、そしてそれは人生にも拡張できるということ。理由なんてものはない、しかし普通の人々はそれを受け入れない、言葉に出来て理解のしやすい何かしか受け入れない。
 何のために?という疑問については、「少年少女」にも描かれています。こちらは将来の夢なんてものを持っていなさそうな少年と少女の話ですが、そんな二人が出会って「何か」を求めようとしています。
 
 どの話にも個性があるのですが、根本はどことなく似ている短編集と恋ヶ窪ワークスLTD。切ないんだか温かいんだかわからない雰囲気が面白いので、大森しんやさんの次回作があれば期待して待ちます。

漫画

Posted by YU