るくるく 10巻感想&総括

雑記
 ふぅ…、前期はキルミンの後釜をミルキィが成し遂げてくれたが、今期は「お兄ちゃんのことなんか~」が自分の寂しさを埋めてくれそうだぜ。
 やっぱり、深夜アニメは気楽に見ることの出来るギャグが良いな。シリアスものは、レンタルで一気見が良い。


10巻
img030_20101201172932.jpg 初見じゃあちんぷかんぷん。全巻読み直してもよく理解できない10巻。最終巻です。
 10巻の本当の魅力を知るためには、物語の全てを理解しなければならないので、頑張って考察していってみます。
 82話では、ヨフィエルが「悪魔は世界を創造しようとしている」という推測をします。その話のオチは、るくが町の模型を作っていたというもの。いつもの勘違いオチかと思ったら、ブブが「そろそろ潮時か」と言います。この話の時点ではまだ全体像をつかむことは出来ません。
 83話では、数が六文の家に電気を引き、ミカエルが電化製品を送ります。るくはすんなりと電気のある生活を受け入れたという描写がなされますが、このるくはミカエルだったことが後でわかります。六文がゲームに熱中して、るく達との会話が少なくなるような描写がなされていたので、やはりるくが電気の無い生活を送っていたのは、私の「9巻感想」で説明したように昔ながらの温かみのある家族同士の生活を送ろうとしたからなのではないでしょうか。
 84話では、ヨフィエルは神に疑問を持ち、るくは自分の姿をした何かの存在に気づき始めます。
 85話では、ここで初めてるくの姿をした何かが存在することがはっきりと描写されます。その正体はミカエルです。ミカエルは六文に、六文と父親とは思えない父親が一緒に映し出されている写真を見せます。そしてミカエルは六文に言います。「あなたを選んだのではない。私が造った。」と。
 86話では、るくとるくの姿をしたミカエルに六文は尋ねます。「うちの家はるくが作り出したもので、俺も親父も本物じゃないのか?」そしてその問いに、両方とも「うん」と答えます。最後にるくは、「そろそろ潮時か」と言います。
 87話では、るくが六文に嫌われますが、るくは「これも予定のうちだ」と言ってあまり問題にしません。六文は自分の存在を証明しようと奔走しますが、なかなか証拠となるものが出てきません。るくの姿をした何かはミカエルだということがわかり、ミカエルが言うにはその目的は「悪魔の企てをくじくため」だそうです。最後に六文は古物屋のおじいさんに、「実は誰もが寄る辺の無いことに気づきたくなくて、それをごまかすために何かを成そうとしている」と言われます。
 88話では、るくとミカエルの問答が最初にあります。後にわかりますが、天界には神はいなく、ミカエルが恐れているのは87話ラストのおじいさんの内容のことです。寄る辺が無いことを認めるのを恐れているのです。ラスト近くで、ミカエルだけでなくるくも天使の羽を見せて、るくもミカエル同様大天使であることがわかります。
 89話では、あんなにカメラに凝っていたるくがアルバムを焼き払います。その理由は、「私の世界には持って行けないから」。六文はるくに、「行くなよ。俺が消えちゃうのが怖いとかじゃなくて…本当は行きたくないんだろ!だったらずっといればいいだろ」と言います。るくは六文に、「夢はいつか覚めるもの。自分が夢を見ていると気づいたら時間の問題。でも安心して、六文は消えたりしない。」と言います。そしてるくは六文に、少しずつ変わってきていることを説明し、「永遠に続くものは無い」と言います。
 場所は変わって、ミカエル達の話になります。ヨフィエルはルミエルに「堕天使」というヒントを与え、「天界には何も無かった」と言います。つまり、神はいないと言っています。ちなみに堕天使というのはるくのことで、るくはルシファーのことだそうです。
 るくは六文と共に神社に来て、「最初の場所だから。あの時からずっとずっと思い出させないようにしてきたのに。」と言い、「私にも本当にやらなければならないことがある」と言います。
 最終話では、るくが「六文と初めて会ったのはこの神社だった」と言います。「どうして俺だったの?」と六文が言うと、後にわかりますがるくはゆで卵がのどにつまったことにして、その問いをはぐらかします。
 ミカエルがやってきて、「人間を楽園にいられなくし、自らも天界から追放されたその罪に対するつぐない」と言います。るくは、「確かに、人間に知恵を与えて楽園から引きずり出したのは私だ。だが、その人間も我々同様、己だけを知るものと己を越えて真理を知るものに分かれる」と言います。
 るくは六文に、「寂しくはなかったか?私がこの世界を創…」と言い、ミカエルは(多分)るくに襲い掛かり、ヨフィエルに止められます。ミカエルは「認められない」と言い、ヨフィエルは「我々には出来なかった。思いつきもしなかった」と言います。
 ミカエルは「貴様…本気で神に成り代わるつもりか!?」とるくに言い、るくは本気で成り代わろうとするような返答をします。ヨフィエルは「我々は決して貴様を認めない。いつか別の時間、別の世界でまみえよう」と言ってどこかに行きます。
 るくは六文に「借りたものは元の場所へ返さなきゃな。今まで一緒にいてくれてありがとう。」と言って、人間の姿をした悪魔達とペロ共にどこかに行きます。
 六文は本当の世界に帰ってきて、あの世界は夢のような世界だったことを知らされます。本当の家や家族はあの世界と全く違い、数に「親子は生まれたときから他人だ」と言って神社の階段を突き落とされて気を失っていたようでした。
 六文は最後に言います。「俺が真理を知るもの?買いかぶりだろ。(るくが頑張って家事をしているところを思い出して)まさか…いや、そっちのほうがおかしいだろ。あんな傲慢な悪魔が…俺なんか」ラストぺージは、るくがどうして六文に選んだのかの理由はあえて明かさないような描写でした。
考察
あの世界は?(あの世界=六文が目覚める前の世界)
 9巻では、「完璧に世界を造っちまえば、疑う奴なんかいない」とあります。10巻でもるくが、「私が世界を創…」と言いかけています。あの世界はるくが創ったものなのか?
 悪魔や天使達はどうやら世界を超える能力を持っているようです。最終話で悪魔や天使達が立ち去っていくシーンを見ると。なので、悪魔や天使達はるくの創造物ではないでしょう。六文は、るくが「借りたものは元の場所へ返さなきゃな」と言っているので、六文もるくの創造物ではないでしょう。では、他の登場人物などはどうなのかと言うと、元の世界でも数や南足がいたので、彼らは一応創造物ではあるけれど完全なオリジナルではないということでしょう。
 あの世界は六文の夢のようなものです。「この世界は夢だ」と気づけば、「起きる」時間が近づいてきているということです。実際、私たちも「これは夢だ」と気づくときは起きる直前だったりします。夢から覚めれば、大抵の場合夢の内容を忘れて、、夢の世界は存在がなくなります。89話にあった、六文の「消える」ということはおそらくこのことです。夢から覚めれば全てを忘れて、夢の中の自分は消滅するということでしょう。るくの「消えたりしない」というのは、目覚めた後でもこの世界のことを忘れないということを言っているのではないでしょうか。
 そう考えれば、悪魔や天使達は六文の夢に現れた夢魔のようなもの?あの世界が六文の夢であるなら、六文こそがあの世界の本質であり世界の命運を握っていたことがわかります。六文が目覚めると六文の夢の世界は無くなるので、悪魔や天使達は世界に留まらずにどこからにいったのでしょう。
 るくの「世界を創った」という言葉と登場人物、六文の夢を考えれば、あの世界はるくが六文の夢の中に現実世界に少し改良を加えたような世界なのだと思います。るくが一から全て創った世界なのではなくて。
・るくの目的にとって、六文とは?
 あの世界では、六文の存在は異質のようです。るくは六文を選んで元の世界からあの世界に「借りて」きます。借りてきた理由には、るくの真の目的である「神に成り代わること」が関わってくるのでしょう。
 最終話で、るくは「人間にも己を越えて真理を知る者がいる」というようなことを言っています。そのシーンの描写を考えると、六文はるくの考える「真理を知る者」の一人である可能性が高いです。で、その真理とは、おそらく六文が数に言った、「親子は生まれたときから他人だ」ということでしょう。元の世界の六文はどのような人間だったかを表す唯一のシーンでしたし、六文があの世界に行くきっかけにもなりましたからね。「物語」の構成を考えれば、おそらくそうです。
 しかしラストページで、るくが六文を選んだ理由はあえて明かさない、というようになっています。ということは、その理由は上記の「真理を知る者だったから」という説以外にもあるということでしょう。るくがかいがいしく家事を行っていたことや、六文の「あんな傲慢な悪魔が…俺なんか」ということを考えれば、るくが六文を選んだ理由には、るくが過去に六文と出会って六文を気にかけていたということも入る可能性がありますね。
 まあ、なんにしろ、六文の「親子は生まれたときから他人だ」という真理は、るくとあの世界に関係してくると思います。過去にるくが六文と出会ったことがあるだけで、るくが元の世界から六文を「借りて」くるとは考えにくいので。
・六文の「真理」と物語
 「家族は生まれたときから他人だ」ということは、実は2話でブブが言っています。六文が、「お前らのどこが家族だ!」と言うと、ブブが上記の発言をしています。
 六文はるくやブブなどの悪魔と共に生活し、最初は「馴れ合ってはいけない」と考えていましたが、最後はるくに対して「行くなよ!」と言うまでになっています。物語全体の流れというものを考えれば、六文はるくたちを「本当の家族」として見られるようになったのでしょう。るくの家事のシーンがこの漫画の多くを占めていた理由には、家事を通して家族らしさを出そうとしていたのではないでしょうか。
 「家族なんて…」と思っていた六文は、おそらく最後には「家族は大切だ」みたいな考えに変わったのでしょう。しかし、るくは「家族は生まれたときから他人だ」ということを真理だと考えているようです。確かにその真理は真理であります。が、その真理以外にも「家族の愛」という真理もまた、存在します。
 では、るくと真理と家族の愛の関係は?
 ・るくの真の目的とは?
 るくの真の目的らしきことは、ミカエルが言っていたように、「神に成り代わること」です。その目的のために、るくが行っていたことは?
 この物語では、神なんてそれほど良いものじゃないという描写がなされています。そして、神なんていないと言われています。ということは、るくが慈善事業をして人間を救っていたのは、存在しない神に頼らずに神の力だと言われているようなことを実際に行って、人間を救うという神の仕事の本分を行おうとしているのではないでしょうか。人間に神の愛、つまりアガペーをもたらそうとしたのかも。
 るくは大天使であったから、人を救わずに威張るだけの天界に業を煮やしたのかもしれません。人間に知恵を与えたのも、良かれと思ってやったことなのかも。ただ、赤ちゃんを見て、「天使か…、人間が皆、赤子のままでいられればな」と言っていたことを考えると、人間に知恵を与えたことは絶対に正しいとは今は思っていないのかも。
 この漫画が宗教を題材にした理由は、おそらく「愛」の描写のためだったのではないでしょうか。仏教も一応出てきますが、それは「苦しみから解脱する悟り」ではなく「救い」重視でしたし。そういうわけで、家族愛を知らない六文が主人公になっていて、るくが六文のもとにやってきたのかもしれません。
 ちなみに、実際の悪魔達が修道士の姿をしていたのも、本当は愛の伝道者であったということを示しているのかもしれません。
・るくの世界創造とは?
 ミカエルが六文にあの世界の断片的な情報を与えて、六文が「夢だ」と気づき始めたことで世界が崩壊に向かいましたが、そんなときでもるくは「これも予定のうちだ」として問題にしませんでした。ということは、るくの「世界創造」の目的には、六文のあの世界を存続させることが第一というのではないのでしょう。しかし、るくが六文を神社に近づけさせないようにして、出来るだけ元の世界のことを六文に思い出させようとしなかったのも事実。あの世界は出来るだけ存続して欲しいが、永遠に存続させるようなものではなかった?
 あの世界は六文の夢のような世界で、現実世界ではありません。どんなにあの世界を救ったり変えたりしても、最終的には六文の目覚めによって崩壊してしまいます。六文以外にとっては無意味に近いあの世界ですが、ではどうしてるくはあの世界の人間を変えようとし、六文をなるべく目覚めさせようとしなかったのか?
 上記のいろいろな考察が正しいのであれば、あの世界はるくの、神の愛の伝道の実験場のようなものだったのではないでしょうか?六文が目覚める前に、出来るだけ人間を変えようとするけれど、実験であるから永遠にあの世界が続かなくても良かったのでしょう。
 以上、るくの行動を総括すると、愛を知らない人の世界を利用して、その世界の中で人に愛を教えて救えるかということを実験し、そして現実世界で愛のある神になることが、るくの目的であったと、私は考えます。
総括
 私の考察が正しいのであれば、この漫画はをテーマにしていると思います。神の愛や家族愛が出てきたのはそのため。ただ、恋愛が出てこなかったのは、愛=恋愛と考えている人たちに対する反骨みたいなものかもしれません。作者が、あさりよしとおですからね!
 考察をしましたが、いろいろな情報が繋がっていくのは爽快でしたよ。正解かどうかは、このさい置いといて。あさりよしとおさんの他の漫画はあまり読んだことは無いのですが、他の漫画も少し理解力が必要なものでした。一筋縄ではいかない漫画を描きたがる人なのでしょうか。それとも、作者自身の頭がかなり良いので、作者が普通に理解できる構成でも凡人にとっては理解に苦労してしまうのでしょうか。「るくるく」の大筋に関わらないシーンでも、ある程度読者の理解力や知識があることが前提のギャグみたいなものもいっぱいあったし。
 そういえば、あさりさんって「まんがサイエンス」を描いていたりするので完璧な理系人間だと思っていたのですが、るくるくを読んでみると宗教関係や家事やレトロな機器についても詳しい、文系方面にも知識が開けている方だったということがわかりました。その文系理系両方の知識量にはやはり感嘆してしまいますが、だからこそこの漫画は読者の知識や理解力前提の構成の漫画だったのかも。
 まあ、内容をよく理解できなくても、るくのドジッ子っぷりや萌えだけで十二分に楽しめる漫画だったけどね!
1~3巻 感想
4~6巻 感想
7~9巻 感想

るくるく(10)<完> (アフタヌーンKC) るくるく(10)<完> (アフタヌーンKC)
(2009/07/23)
あさり よしとお

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Posted by YU