攻殻機動隊S.A.C The Laughing Man 感想
攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man
制作 Production I.G 監督 神山健治
2002年に放送されたテレビアニメ攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXの笑い男事件のエピソードを160分にまとめた「The Laughing Man」の感想を書いていきます。
複雑な事件ですが、噛み砕いて俯瞰すればかなり面白いものでした。もちろんアクションも。
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man [DVD] (2005/09/23) 士郎正宗、田中敦子 他 |
第一印象としては、本当にこれテレビアニメでやったのか!?ってことですね。すげえ、凄すぎる。普通に劇場版レベルのこだわりだろこれ、って言いたい。まあ今回見たのはテレビアニメ版を凝縮したものですが、それでもすげえ。
まずはアクションからいきましょうか。「攻殻機動隊ってタチコマとかの兵器でバンバンやりまくる作品なんでしょ?」などと、ふざけた印象を持っていましたが、案外そこまでアクションが多くなく、複雑な事件を追う中で必要とあらば戦う、ってほどでしたね。でも個々のアクションシーンはどれも迫力があり、特にパワードスーツとタチコマには圧倒されました。
パワードスーツとタチコマは多くのシーンでCGで描かれており、おかげで手描きよりもかえって機械的な感じが出て、一つ一つの挙動と迫力を充分に楽しむことが出来ましたよ。ああ…私も各一台くらい欲しいな…。でもタチコマは意外に弱かったな…。
攻殻機動隊の世界では光学迷彩も発達しており、「ブウゥン…」という効果音と共に消えるシーンは超かっこいい。そしてかすかに暖簾が揺らぐというような演出もかっこ良過ぎる…。
この笑い男事件で度々登場する笑い男マーク、この作品を知らなかった私には衝撃的でした。この笑いマークってこの作品が初出だったのか!このマークはネット上でもよく見かけていましたが、この作品を愛している人たちが尊敬の念を込めて使っていたようですね…。作品中だけでなく現実世界にもこの笑い男マークが浸透していただなんて、これもある意味SACか。
調べてみると、このマークってわざわざイギリスのアーティストに作ってもらったようですね。テレビアニメにどんだけ気合入れているんだよ…。何だか私もこのマークのTシャツとか欲しくなってきた!
ストーリーの感想に移りましょうか。
多くの勢力と人間が出てきて、それぞれがそれぞれの思惑で動いているのでかなり複雑な事件のように見えますが、だからこそその複雑さが端から見れば、一つの線のように見えてしまうこの現象は、奇妙な偶然なのか、それとも必然なのかってのが感慨深いです。確かにこの事件は「STAND ALONE COMPLEX」だったとはっきり言えますね。
電脳化が進んだこの攻殻機動隊の世界では、人間自体をハッキングして操作したりすることも出来るようになっています。そんなSF世界だから私たちも、笑い男事件は最強のハッカー一人が全てをやり遂げていた、と推理してしまったかもしれません。笑い男に操作されているように見えたやつらがどんどん増えたのも、ウイルスのパンデミックのようなものだとも推理したこともあります。しかし真相は、それぞれの人間がそれぞれで『笑い男』という実在しない存在を持ち上げ、模倣してみたり利用してみただけだったのです。
終盤には笑い男を追っていた公安9課ですら笑い男を演じてしまった、ってのは衝撃的でしたよ。マクロ視点ではなくミクロ視点ではあの少佐の行動は、まあ納得出来るしそうするべきだったけど、他の『笑い男』もこういう風に『笑い男』を利用していたんだな…。
特A級のハッカーであるアオイですら、オリジナルだとは言えないようでしたね。一番最初は村井ワクチンとマイクロマシンの効果の比較を行った論文です。これがここまで多くの人間を経由して、ここまで大きな事件へ発展していった、ということですかね。
情報の並列化によって個が知らず知らずの内に全となり、そして全という概念しか無いと思われたAIが個を確立していくという、対立概念がそれぞれ対立概念へ近づいていく不可思議な現象を、私の中では初めてはっきりと示してくれたのがこのアニメとなりました。
160分もある難しい作品を一気に視聴するのは無理かなと視聴前は思っていましたが、面白すぎて余裕でしたよ!事件の全容がわかっていけばいくほど面白くなり、最後の俯瞰で最高の感慨も得られました。SFとしての設定やアクションも最高の作品でした。
一応2回視聴しましたが、私の認識を見事に翻弄させてくれたのはやはり1周目でした。記憶を飛ばしてもう一回見てみたい作品の一つです。
UEI shi3zの日記さんから引用