2023.10.01 人より猫がいる島、佐柳島で癒される
2023年10月1日、ようやく季節が進んだけどその良い気温も短いものだろう、と既にその貴重さを予測できる秋の日和。
晴れの日曜日に瀬戸内海に浮かぶ猫の島、佐柳島へ行きました。
佐柳島は面積2平方キロメートルにも満たない小さな島。
かつては数千人も暮らしていたことがあったようで、南の本浦と北の長崎にある墓場の広さを見るとその人数もあながち嘘ではないかも、と思えます。
現在の人口は100人にも満たしません。
長崎には岡山県側へのフェリーの運航がありますが、現在は週1日程度。
本浦は多度津から毎日数本の便があります。
香川県多度津からフェリーに乗って、高見島を経由して約1時間。
本浦へ接岸しました。
朝は曇り、少し肌寒い風が吹くので、防風ジャケット(カッパ)を着て散策開始。
海の水は綺麗なものです。
本浦の船着き場前に広場やトイレがありますが、ここが猫のおもてなし空間。
「お?ニンゲンがやってきたな?じゃ、エサくれ」
といった感じですぐに寄ってきます。
怪しくて素早い動きをしなければ逃げません。
そんな動きすると人間も逃げます。
エサもにゃいのに鳴きながらついてくるネコちゃん。
でも触ろうと手を伸ばすと、ちょっと逃げるのだ。
こらこら、人間はエサ運びじゃなくて魔性のナデナデもあるというに。
本浦南側に寺と墓場があります。
寺近くはまだ整然としていますが、海側は雑然。
倒れている墓石も多いです。
佐柳島には参拝地と遺体を処理する2種類の墓、両墓制が残る珍しい島です。
墓の形態が違うのは、やはり文化的なもの。
お寺は真言宗のようです。
地理院地図等によると山の上に見晴らしの良さそうな神社があるようですが、人通りが少なくなってアクセスも難しそうなので、今回は諦める。
真冬の草が無い時とかなら行けるかもしんないね。
北上しながら道脇の家々の雰囲気を楽しむ。
同じような構図、アングルだけじゃなくて猫の目線になってみよう。
そんなわけでローアングルで写真を撮ってみるのです。
非常にセンスのあるお家発見!
細部にこだわる茶室的な作りです。
小さな塀を作ろう、と思ってこんな塀を作ろうとするか?
「神は細部に宿る」
無意識上に舞い降りてくる神は、芸術という形をとる。
参道のど真ん中でお昼寝中。
ええもちろん舐めるようなナデナデをしてやりましたよ。
最近佐柳島の廃校跡を使って「ネコノシマホステル」という宿泊所兼喫茶店が出来たようです。
あとでネットでメニューを見ましたが、チキンカレー普通においしそうです。
この日は菓子パンで昼食を済ませましたが、入ったらよかったなあ……
佐柳島は宿泊場所が無い、と思い込んでいたので日帰りとしましたが、もう一回来て泊まってみるのも、良いなあ。
北の長崎集落にやってきました。
中心地らしい場所もありますが、人口も少ないのでお店らしいお店は見当たりません。
昭和中期ごろは、この辺が商店街だったんだろうなと思う。
両墓制の本元は、この長崎の墓場。
石を積んで墓場とするのはやはり珍しく、この光景はまるで青森の恐山のよう。
草もほとんど生えておらず、荒涼とした風景にも見えます。
ここが、死者のおわします世界。
青い海と空へ魂を還す、そんな死に方をしたいものよ。
佐柳島の最果てにやってきました。
相変わらず水は綺麗です。
静かな長崎の集落を歩きます。
何も、何も生活音が聞こえません。
テレビの音も、話し声も、車やバイクのエンジン音も。
人工音としてはわずかに遠くから船のエンジン音が聞こえるくらいで、あとはカラスの鳴き声、虫の音、潮騒。
あなたは一人、崩壊後の世界にやってきました。
大自然が飲み込むにはまだ少し猶予があります。
しかし何もしなければいずれ、人工物は崩れ、草木が生い茂っていくことでしょう。
あなたはここから去って町は運命に任せますか、一人で残って維持管理をしてみますか。
……そんなことを夢想する。
帰りのフェリーにはまだまだ余裕があるので、ひたすら猫と戯れる。
メス猫触った後にまた別のメス猫が寄ってきて触ってたら、前のメス猫がゆっくりと私に向かってくる。
「……あなた、節操ないわね。私の臭いをプンプンとまといながらよくもまあすぐに別のメス触れるものよね」
なんて思われている気もする。
むー、だって懐っこいネコちゃんいたら放っておけないよね!
佐柳島にもいくらかは砂浜があり、夏になったら泳げそうでもある。
でも海の家は多分出なさそうなので不便かもしんない。
のんびりは、出来ます。
広場のベンチで猫を抱きながら、最近始めたお遊びデッサンをしてみる。
そうそう、情報過多のこの時代、インプット過剰でアウトプットの楽しさを忘れつつあるので、最近お絵描きや物書きをしてみてるのよ。
まず間違いなく上手くはならないだろうけど、頭の中から何かを出力する訓練をしておかないと、いずれは本当に何一つ面白いことを表現できなくなるのではないか、と思えて……。
右のネコちゃんは病気なのか、ずっとデロデロの涎を垂らしています。
汚らしくて触りたくない、でも、人懐っこいんだよなあ……
私以外の観光客にもすり寄って、その不衛生さに邪険にされていたんだろうか、と思うとちょっと涙が出ちゃう😿
エサも無いので、この子にしてやれること言えば、ティッシュで涎や体を拭いてあげることくらい。
次来るときは、エサと身体拭き用のシートとか持ってくるね。
10時に着いて、15時半のフェリーで帰る。
こんな小さな島でも簡単に数時間楽しめたのはやっぱり、ネコちゃんがいたからです。
佐柳島の魅力はもちろん猫だけではありません。
静かすぎる集落、荒涼としながらも整然とした墓場、海の綺麗さ。
島の行く末はネコちゃんたちにどのような影響をしていくことでしょう。
その心配が、無意識的な佐柳島への愛着へとなるやもしれません。