奈良・和歌山 2021年周遊ツーリング
2021年9月18日から20日にかけて、奈良県と和歌山県の周遊ツーリングに行ってきました。
私は徳島県民であり、和歌山なんて対岸のすぐそばだというのに、しっかりと観光したことがありませんでした。
そこでコロナの蔓延防止も緊急事態にもなってない奈良県と和歌山県の両県を久しぶりの旅行先に選んで、3日かけてじっくりとツーリングしてみることにしました。
当初は行きも帰りも南海フェリーを使う予定が、台風の影響で行きは休航。
行きは淡路島経由奈良入り、帰りは和歌山港の南海フェリーで徳島港とすることに。
1日目 奈良県橿原・天理
台風明けだがフェリーは休航、橋は二輪規制無し。
休航情報を見届け、午前9時に出発。
風は少しあるが普通に走れた。
大阪高速は厄介だが順調に奈良盆地へやってこれた。
だが奈良盆地の下道は非常に混雑して流れは悪い。
学生の頃は名古屋から徳島へ行き来していたが、いつも奈良盆地で足止めを食らっていた。
全国一宮の御朱印を集めているので、最初は大神神社へ行く。
寺社が非常に多い奈良の中の一宮であるので風格はかなりのもの。
観光客も多いし、名物の三輪そうめんの店が軒を連ねる。
いつもどおりお参りして、静かな雰囲気を謳歌する。
昼ごはんは三輪そうめんとした。
器からして雅で、静かだが厳かな都の残滓がある。
麺は細いがコシが意外にあって食べごたえはある。
次は、奈良盆地の中で最も行ってみたかった天理へ。
天理は事実上天理教の宗教都市で、日本国内での新興宗教の宗教都市は天理市だけらしい。
昔通りがかった時は異様な雰囲気で恐ろしくもあったが、改めてちゃんと見たくなったのだ。
天理教の中心部「おぢば」の周辺に施設が集まっているが、建築様式が統一されていてかつ広大なので、やはり異世界の感がある。
最も大きくて目を引くおぢばは開かれているようで、天理教徒でも何でもないがこっそり入って一周してみる。
本当に、木造建築としては素晴らしいものだと思う。
節は埋められ、床板は磨かれ、浮き上がったり腐ったりしているところは全く無い。
管理が行き届いているのだろう。
一周歩いている時、信徒の方々が雑巾で床を拭いていた。
途中挨拶はされたが、特に異端を迫害する感じも一切なかった。
天理教徒らしき人々が運営している商店街も近くにあり通ってみたが、本屋は見ものである。
天理教に関する本は一般書店にはほとんど見かけないが、ここには本棚を埋め尽くすほどの種類がある。
私も大分本が好きな方で、本屋巡りをそれなりにやっていると思っていたが、ここまで日本語なのに知らない本が並んでいるのを見たのは始めてで、別世界とか新世界とか、そういう好奇心を覚えた。
まだ、自分に知らない世界がこんなにあるだなんて、衝撃だった。
ホテルに着いた後に近くのドラッグストアで食料を買い出したが、天理教のハッピを着た人が普通に買い物をしていた。
社会に馴染んでおり、違和感も感じられなかった。
本当に、天理市は面白いところだった。
他の宗教都市は観光地化されて久しいが、ここまで純粋に生きている宗教を見て感じたのは初めてかもしれない。
未だに新興宗教っぽさがあって信徒以外は寄せ付けにくいからこそ、宗教の感じが残っている。
この日の宿は、ビジネスホテル喜楽というところ。
天理市役所向かいにあって、立地は良いが安いのが良い。
ビジネスホテルとは言うものの、民宿らしさがある。
和室で、布団。
部屋は埃とかは無いがあちこちにシミ多く、老朽化を感じさせる。
何で天井に手の跡みたいなのあるんですかね…
風呂・トイレは共同で、掃除はされているが新しさは無い。
風呂は湯を張っておらず、必要とあらば自分で張るもの?シャワーだけにしておいた。
晩飯は近くのドラッグストアで買った、パンとタンドリーチキンとストロングゼロ。
タンドリーチキンうめえっす。
Wifi繋いだスマホでYoutubeを見て、夜を過ごす。
2日目 奈良南部・和歌山県串本・田辺
朝7時半に出発。
和歌山県南部を目指して、奈良南部の山林国道を走っていく。
有数の降水量を誇る地域だからか、晴れ時々曇りの予報だがポツポツと雨が降ってくることも。
振り切って走った。
熊野に出るまでは集落も少なく、都市部らしい場所は一切なく。
大阪周辺の人々が多くツーリングにやってくるであろう地域ではあるが、寂しさはやはりある。
この険しく悪天候になりやすい土地柄が民衆を遠ざけ、酔狂な被虐嗜好?の修行者たちを惹きつけたのだろうか。
バス釣りなどのアウトドアスポーツの施設はいくつかある。
熊野に出ると気候も打って変わって、非常に明るく交通量も多く、賑やかで夏らしさがある。
まだまだ残暑は続いており、セミがやかましく鳴いていた。
熊野には鬼ヶ城という、世界遺産の一部になっている場所があるらしく、せっかくだから観光してみることに。
鬼ヶ城は波や山からの水流で削られた奇岩が非常に面白い場所だった。
火成岩のような強固さは感じられない砂岩のようなものだったが、非常に不安定な状態で形を保っているのが興味深い。
岩の雪庇のような場所に立つと崩れてしまいそうで怖いが、崩れないのが不思議だ。
また、山上から多くの水が流れており、その水流で穴が開いていたり水路が作られている。
まるで鍾乳洞のようだ。
鬼ヶ城の歩道は狭いので、戻りづらい。
迂回路を通って帰ったが、結構な時間がかかった。
熊野からは串本を目指す。
シルバーウィークだけあって、観光客は非常に多い。
国道には様々なナンバープレートが彩り、まるでコロナなんて無かったかのようだ!
熊野古道が世界遺産に選ばれたことでそれに関係する多くのものが世界遺産となっている。
場の雰囲気全体を鑑みると、補陀落山寺は美しいものだった。
古来、西南の海に漕ぎ出せば、聖地に行けると信じられていた。
実際、仏教の聖地であるインドに向かうなら、西南に向かうのだが。
ゆえに、日本国内でも西南の海沿いに補陀落渡海に関する寺がいくつか残る。
井上靖の補陀落渡海に関する小説も読んだが、おすすめである。
美しい青空と海を見ながら南を目指す。
本州最南端の町、串本には観光地が多い。
代表的なのは橋杭岩。
観光客は非常に多く、まるでコロナなんて(以下略)
不思議な立岩が並ぶが、褶曲地層による侵食度合いの異なりが原因かと思いきや、貫入した細長いマグマへの巨大な波の衝突エネルギーによるもののようだ。
言われてみれば、確かに陸側にのみ岩がゴロゴロしている。
太平洋に向かっているから、津波もよく来るのだろうな。
ただ純粋に、空と海は美しかった。
昼食は喫茶店で食べた和歌山ラーメン。
紀伊大島に渡って、先端を目指してみる。
トルコのエルトゥール号に関する施設があるが、コロナで休館。
灯台まで歩いて、雄大な自然を堪能する。
近畿のライダーの聖地でも潮岬へ、遂に着く。
観光施設は多いが、広大な草原も残っており自然は美しいものだ。
断崖絶壁の「行き止まり感」は少ないが、のんびりと楽しむには良いところだろう。
潮岬の施設はコロナのおかげで3時に閉まるようで、時間ギリギリでお土産を買った。クジラの肉を。
大きな目的を果たし、2日目の宿がある紀伊田辺へ。
…の前に白浜の温泉に入ってみる。
名前だけは聞いたことあるが、ここまで近畿では有数の観光地だとは知らなかった。
県外ナンバーがほとんどを占めており、賑やかである反面ちょっと伝染りそうで怖いわ…
行ったのは長生湯。
大きなものではないがやはり古湯か、泉質が濃い感じがする。
2日目の宿はゲストハウスタカオ。
外国人が運営しており、外国の旅行客も多く泊まるようだ。
ドミトリーが基本。
当初は個室に入れる宿を探していたが、選んでいる途中に埋まってしまった。
ゲストハウスタカオの脇には空き地があり、バイクなら無料で駐車が出来た。
運営を始めたのは最近のようで、設備は綺麗である。
台所もトイレも部屋も綺麗で、日本人じゃないからって不潔であるわけではないことを再確認する。
安いから不安だったのだが。
晩御飯は田辺駅前まで歩いて探し、ラーメンを食べた。
久しぶりに生ビールを飲んだが、どうして、店で飲むビールはこんなに美味しいんだろうね…!
3日目 和歌山中心部など
午前6時半にゲストハウスを出発。
チェックアウトは必要ない。
清廉な朝の空気を吸いながら走るのはいくつになっても気持ちのいいものだ。
この日は和歌山港から徳島へ帰れさえすれば良いから時間は有り余るはずだ…と思っていたが、全て観光するには少々時間が足りないかもしれない…。
まずはこの旅の目的の一つ、全国一宮御朱印を集めるべく奔走する。
1つ目は高野山麓にある丹生都姫神社へ。
山奥の小さな神社とも思っていたが、山々に囲まれた小さな盆地の中にあり、まるで桃源郷のような美しい場所に位置していて、価値を見誤っていた。
本殿なども美しくまとまっており、絢爛豪華な毒々しさは少なく、良い雰囲気の場所だった。
山を降り、和歌山市街へ向かう途中に伊太祁曽神社はある。
市街の郊外に位置しており、ここもいくらかの静かな雰囲気を楽しめる。
特に、池と橋が美しいし、青石を基礎とした山門?も趣ある。
さあ和歌山市街を観光だ。
まずは紀三井寺へ。
有名な寺らしく、門前町もある。
階段が長く、残暑が厳しくマスクもうざったいのがしんどい。
早く秋が深まれば良いのに。
だが山上から見る和歌山の平野と紀伊水道は美しく、和歌山の県名の由来ともされている和歌の浦が良いアクセントになっている。
紀三井寺から見ていたら行きたくなってしまった。
和歌の浦へ行く。
紀伊水道に向かっては広大な白砂の砂浜があり、海水浴には最高の場所だろう。
対して内側には干潟が残る。
埋め立てられなかったのは少し不思議でもある。
目先の産業より、半永久的に残る文化を愛したのだろうか。
この旅の最後の一宮、日前・国懸神宮へ。
相対するように2つの神社があるのが特徴的だ。
行きたかった和歌山城には近くに県立博物館もあり、一緒に観光した。
フェリー乗り場も近く、時間の余裕を持ちすぎずに楽しめるのが良い。
15時半頃に出発のものに乗ろう。
県立博物館で和歌山のだいたいの歴史を知る。
中央のすぐ近くにも関わらず、いや近くだからこそなのか、群雄割拠の時代が非常に長かったのが特徴的か。
そう言えば丹波辺りもそうだったか。
和歌山城は復元天守で、現存天守のように強く歴史を感じることは出来ないが、最上階が展望台として整備されているので心地よいものだ。
夕暮れの紀伊水道を見ながら当主や人々は何を思っていたのだろうかと、最近はそういうことばかりを考えている。
時間になった。
南海フェリーの港へ行き、とくしまプレミアム交通券で運賃を支払う。
座敷に位置取り、エンジン音を聞きながら司馬遼太郎「故郷忘じかたく候」を読む。
たまに甲板に出たり窓を覗いたりして、和歌山を見送り、徳島を迎える。
夕日に照らされた紀伊水道を渡る。
美しき旅でございました。
2021年の夏は、この旅が代表することでしょう。