エイリアン9エミュレイターズ 感想
エイリアン9-エミュレイターズ 作 富沢ひとし
前作、エイリアン9の続編であり完結編であるとされる、「エミュレイターズ」の感想を書いていきます。前作についての感想はすでに書いているので、もしよろしければ前作感想もどうぞ。
今作は本編だけでなく、特別編2つとおまけ漫画がついています。
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さて、小学6年生から中学1年生となったゆり、くみ、かすみですが、ゆりがでかくなってる！？以前はくみ>ゆり=かすみだと思っていたんだけど、今はくみ>ゆり>かすみになっているっぽい。まあ、小六・中一あたりは成長期だからな…。
今回、主に使用した設定は、「世代」のようです。ボウグ達は今は人間と共生していますが、以前は他のエイリアンとも共生していたっぽいです。どうして世代交代が起こるのか、とかはわかりませんが、共生されていた旧世代たちが今の人間である第9世代に嫉妬したりするシーンは面白いものです。
しかし、物語の根幹は旧世代が新世代を脅かすことではありません。前作同様、主題は少女たちがお互いに寄せる想いとなっています。が、前作はゆりが主眼点であったのに対して、今作はくみとかすみにスポットライトがあたっているという違いはあります。
最初にゆりの身長のことを書きましたが、つまり、ゆりは成長しているということです。成長と言うよりは変化と言ったほうが正しいのかもしれませんが、ゆりが男の子と仲良く話していたりと、身体以外の面にも変化が表れています。
が、くみはボウグと同化したことで人間ではなくなり、ボウグの本能である共生欲が強くなってきています。そんな彼女だからこそ、ゆりが自分の元を離れていくのに耐えられず、ゆりに近づく男の子に嫉妬したりしたのでしょうね。3人一緒の仲良し組がゆっくりと壊れつつあるその危機感、なかなか寂しく、恐ろしいもののように思えます。
ラストシーン、くみの共生欲による苦しみをかすみが取り除こうとし、くみの前にゆりをお膳立てして共生を勧めます。が、優しく強いくみはそれを拒否。くみはボウグの本能に乗っ取られることになりますが、先輩の駒井が機転をきかしてくみを救います。駒井のボウグは言います、「お前ら、最高の共生体だよ」と。
前作では基本的にゆりの心情にスポットライトが当たっていましたが、今作ではくみとかすみが大きく着目されていたので、3人のそれぞれへの想いというのがわかりやすくなっていると思います。だからこそ3人がそれぞれを大切に想っていることがわかり、そしてそれは人間とボウグのような敵を与えられることで人工的に作られていく信頼関係よりも、もっと強いものだということが示されている、と私は感じました。一緒に戦って、一緒に生活して、たまにけんかしたり嫉妬したり、でもそういう風に作られていく信頼関係のほうが、強いのだと。
さて、ここから細々としたことを書いていきますが、かすみが顔を牛乳に浸すシーンの意味って、皆さん一発でわかりましたか？私は、わかりませんでしたよ！3週目くらいでようやくそれっぽい答えが思いついたのですが、その話のサブタイトルが載っているページにかすみが植木鉢のようなものを持っているということとその後の展開から、あれってかすみがイエローナイフの種子のようなものを出して培養しようとするシーンだったようですね。
2,3ページずつあるおまけ漫画ですが、これらはものすごくポップで面白いです。少しきな臭い本編の、良い清涼剤となりました。やっぱり日常シーンってシリアスの間にあるから、ひときわ面白く感じるんですよね。
エイリアンのデザインや戦闘シーンのドリルの妙な迫力は、エミュレイターズでも全く失われていませんでした。特に特別編のアグレッサーとの戦いなんて、擬音が無くても擬音が勝手に頭の中で鳴り響いてきそうなくらいの迫力でしたよ。
前作の感想ではエイリアン9の「9」について全く言及していませんでした。一応本編で出た「9」としては、第9小学校、第9世代がありますが、しかしこれらだけなら9じゃなくても良かったですよね？別に3でも5でも7でも良さそうですし…。
もしかして、何かのパロディなのかも？と思って調べてみたところ、「District9」という映画が出てきました。この映画もエイリアンが出てくるけどアクションだけじゃないし、これか！？と思って公開年月を見ると、2009年8月だった…。この漫画は1998年から描かれたので、由来はこれじゃないね…。何なんだ一体、9って！？
後、 今作のタイトルとなっている「エミュレイターズ」ですが、直訳すれば「模倣者たち」となります。たちがついているので、本編に出てくる複数の何かを表しているようですが、何を示しているんだろう？宿主に似てくるボウグたち？巨視的に見た、人間たちとか？