トライガン14巻 感想&総括
雑記
今日も暑い。
早く冬になって欲しい。
クリスマス辺りに東尋坊行きたい。
14巻感想&総括
14巻は表紙がヴァッシュの満面の笑み、おまけ漫画なし、ページ数増量というようにかなり最終巻らしい構成になっています。それにストーリー展開も、本当に終わりが近づいてきたんだなあと思わせるほどにクライマックス感の出ているようなものになっていますね。不殺の男、ヴァッシュが決断を下したシーン、全人類が一体となって生き延びようとするシーン、最後の最後に人間サイズでの最終決戦。そのどれもが効果的に組み合わさって、あの雰囲気が出たんだなあと思いました。
最終決戦なのでこれまでのヴァッシュの人生も総括するような展開になっていたでしょう。ずっと人間の中で暮らし、蔑まれたり騙されたりしながらも人間を救ってきたヴァッシュの足跡、それは確かに人々の心に残っていたようです。もちろん、プラントにも。
人とプラントの関係というものは、人がプラントに寄生しているようにも見えますが、プラントにも人間が必要だったのだと思います。そりゃもちろんプラントは人間によって働かせられ続けて恨みを持っているのかもしれませんが、しかし人間の中にはプラントに感謝してお祈りするような人もいます。そんなこんなでプラントの感情は複雑なものとなっていると思いますが、もう一度人間と共生しようとしたのはヴァッシュがいたからというのが一因となっています。
150年歩き続けたヴァッシュの軌跡、彼のラブ&ピースな生き様はただの理想をどうにか現実へと適用してきたものだと思います。少ない資源を争って死んでいく多くの人々、愛も平和も無いこんな世界で努力してやれることの全てをやって争いをなくそうとしたヴァッシュの生き方というのは、現実を見据えていないただのバカに映るかもしれませんが、だからこそその生き方を貫き通したことで種族を超えてあの奇跡を起こせたのでしょう。
SF漫画としても見て面白いですが、バトル漫画として見てもかなり展開が燃える。宇宙船レベルでの戦闘から人間サイズでのレベルにバトルが移るのは結構好きな展開です。「封神演義」でも太公望と聞仲の殴り合いのシーンは好きですからね。あのような「最後」の雰囲気が醸し出されているのは大変大好物です。
エピローグでは地球人と現地人が仲良くヴァッシュの取り合いをして終わり。最後はギャグ漫画みたいなどたばた展開で終わるのかと思いきや、なんと見開きカラー!
このヴァッシュの精悍な笑顔とどこまでも広がる地平線、澄み切った青空。本当にトライガンらしいしヴァッシュらしい!
最初は、この星は何も無い荒れ果てた荒野が広がる不毛の星、というような印象でしたがこのページを見るとそんな思いも吹き飛んでしまいます。なんて広くて美しい星なんだろう、そう思いませんか?
この読者への印象の変化によって、この星に住んでいる住人たちの心境の変化をも表現しているのではないでしょうか。プラントが少しずつ減ってジリ貧だった以前とは違い、今は地球からの救いの船もやってきて将来は約束される。それによって荒んでいた人々の心にもゆとりが入ったのでしょう。ですからテレビに映し出されたヴァッシュを見てみんなが微笑んでいたのだろうと思います。
それにヴァッシュの心境もこのページで分かってきますね。これまでずっと呪縛のように旅をしてきたヴァッシュですが、ナイヴズの野望を止め、地球からの船がやってきた今となっては最早ヴァッシュにやるべきことなどというものはありません。無理に争わなくてもいいし使命感を持って何かをしなければならないということもない、ヴァッシュは本当の自由を手に入れたのでしょう。
しかしヴァッシュの笑顔は自由を手に入れたからだけではありませんね。全てが終わった安堵感、いつも通りのどたばたな旅、そしてこの世界の美しさに気づいたこと。
ナイヴズに人間の醜さを説かれても必死に否定していたヴァッシュですが、しかしある部分では彼も人間に失望していた面があったと思います。しかし今のヴァッシュにはそんな思いは無く、彼の暗く沈殿していた心はこの澄み切った青空のようなものになったのでしょう。物語途中で曖昧に笑っていたヴァッシュの顔とこのページの顔を見比べると、本当にヴァッシュの心は全てがいい方向に向いたんだなあと実感します。
たった2ページの見開きカラーだけであれやこれやと考えてしまいましたが、このページこそが「トライガン」を総まとめするようなものであったと思います。
トライガンマキシマム 14 (ヤングキングコミックス) (2008/02/27) 内藤 泰弘 |