おもひでぽろぽろ 感想

雑記
 自分は最近大きな決断をした。
 一体それが本当に正しいのか間違っているのかわからない。
 しかし人間の歴史上最も重要な感情である「好奇心」というものに私は支配された。
 もしかしたらそれは人生を狂わせる災厄となるかもしれないが、私は決断してしまったのだ。
 ○○ゲーを注文した。


おもひでぽろぽろ
 ジブリなのに1度だけしかテレビで見たことがない、おもひでぽろぽろの感想を書きます。ナウシカやラピュタに比べれば、テレビで放映されるのは遥かに少ないように感じます。万人向けっぽくないからかな?
 あらすじは、OLのタエコが田舎に休暇に出かけ、そのときに小学5年生の自分を思い出していく…といった感じですね。どうして彼女自身が「たいした思い出もあるはずなかった」と言っている小学5年生の時代を思い出していくのかは、劇中で説明されます。
 小学5年生の思い出は、普通に現実にありうるちょっとした事件ばかりです。警察が来るほどの事件とか幽霊や宇宙人に会ったなんてことは一切無く、誰にでもありそうな思い出が描かれていきます。しかしその思い出こそが彼女の人生の重要な要素となっているわけで…
 作画のことですが、現在はどこまでも緻密に描かれた繊細な絵になっているのに対して、過去では風景などが淡い色で描かれてどことなく幻想的な雰囲気になっているように思えます。しかし過去は背景が白であることが多いので、なんとなく冬のような少し寂しい感じがするような気がします。
 後…やっぱり笑ったときにシワが出来るような作画だったので、タエコは年をとっているという印象が強すぎましたねぇ…。
 タエコが小学5年生を思い出していたのは、タエコが言うには、あのときのように再び蛹の季節が今やってきたかららしいです。小学5年生というのは、女の子では生理がそろそろ始まって大人に近づく年頃です、身体的にも精神的にも。ですから、幼虫から成虫へと成長するための蛹の時期のようなものだったのですね。
 しかしもう一度蛹の季節がやってきたということは、もう成虫になっていると自分で思い込んでいたけど本当の意味で成虫にはなっていなかったということですね。まだ結婚はしていないですがれっきとした社会人のタエコは、今の状況だけ見れば立派な大人に見えます。しかしそれでも、蛹の季節が再びやってきたということはどういうことなんでしょうか?
 この疑問はこの物語の本質に関わる問題だと思います。彼女は今の自分を「飛び立っていたつもりだった」と批評します。それに仕事に夢を持っているトシオに比べて、彼女は仕事に対してあまり覚悟というか本気というか、そういうものを持っていません。それに田舎で結婚の相談をされたとき、彼女は自分のことを「覚悟がなかった」と感じています。
 小学5年生のラストエピソード、アベ君のことを思い出してタエコは自分のことを「良い子ぶってた」として批判していました。アベ君はタエコの前では強い大人のフリをして変な歩き方をしたり道につばを吐いたりしていました。彼女はアベ君の本心に気づかずに、彼に何か悪いことをしたんじゃないかという罪悪感を持ち、それゆえに彼女は彼の真似をしたそうです。
 タエコは今までアベ君のように、どこか強がった感じで人生を送っていたのでしょう。アベ君を後ろめたかった故に、彼の真似をしていた。そういう心のしこりが残ったままで送ってきた人生だからこそ、彼女にもういちど蛹の季節がやってきたのでしょう。心の奥底にあるものを吐き出して新たに飛翔するために。でも、精神的成長の蛹の季節という言葉ではどことなく合わない感じがするので、言ってみれば人生の蛹の季節だったということでしょうか。
 
 ジブリの中ではあまりぱっとしない感じの作品ですが、私はかなり好きです。過去のなんでもない思い出が今の自分を形作り、人生を形成してゆく。そしてあまり重要ではないと思っていたことが、実際は今の自分の重要な要素であるかもしれないということなどを、丁寧にかつ文学的に描いた作品になっていたと思います。
 後、ラストシーンの演出は自分の見た映画の中では屈指の出来でした。心に沁みる歌が流れながら、タエコが決断してもう一度田舎に帰ろうとするところ。何と言うか、この映画の全シーンはこのワンシーンのために作られたと言っても過言ではないと思います。タエコの心情の変化とこれまでの人生全てを理解できたかのような、何か人生の本質を垣間見た感じがしてかなり素晴らしかったです。

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Posted by YU