アニメ版時をかける少女 感想

時をかける少女   監督 細田守
 2006年に公開されたアニメ映画「時をかける少女」の感想を書いていきます。原作は1967年発刊の小説「時をかける少女」で、作者は筒井康隆さんです。原作は確か高校生の頃に読んだな…。
 wikipediaを見るとこのアニメ映画は、当初上映は全国で21館ほどだったようですが、ネットの口コミで出来が広まり、上映館と人気が出てきたようですね。

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(2012/07/11)
紺野真琴:仲里依紗、間宮千昭:石田卓也 他

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 まず作画について言及しましょう。
 人体などは書き込みが少なく、一瞬一瞬で見ればあまりアニメ映画クオリティではないかもと思いました。しかし、その分動きが多く、顔や体の一部だけが動くとかそういうシーンは少なく、ほとんどのシーンで全身が動いていたように感じました。それに道行く人々とかの動きも、CGっぽいところもあるけどちゃんと描かれていたりしますしね。
 背景などはやはり綺麗です。細かな場所まで書き込みがなされており、見ているだけで楽しいです。
 作画で特に私が気に入ったのは、光線の入り具合です。真昼くらいの時間だからって、建物内にも全て光線が届くわけでありませんよね。そういう、窓から届く陽射しとかが結構綺麗に描かれており、光と陰影によってノスタルジーがさらに増加していたように私は感じます。
 蝉の声が聞こえ、皆が夏服を着ている辺り、この映画の季節は夏でしょう。しかしあまり汗ばんだシーンとかはなく、うだるような暑さを感じることはありませんでした。おそらく、最高気温が35度とかになる1年で最も暑い時期とかではなく、気温を考えれば6月の中・下旬、9月後半くらいなのかもしれません。
 夏の暑さによる不快感は除かれており、その代わり夏の明るさとか夜の過ごしやすさとかはよく描かれていたと思います。でも明るいシーン=賑やかとかそういうのではなく、視覚的には明るくても雰囲気的にはしんみりしているシーンも多かったですね。そういうギャップによって、何だか雰囲気が良くなったように思えます。
 主人公たちは、進路を考え始める高校2年生。将来のことは考えなくちゃならない、だけど二度と戻らないこの青春の日々を楽しみたいという思いもある、微妙な年頃です。そういう心情が夏の明るくも静かな雰囲気とよく合っていました
 さて、真琴がタイムリープの能力を得てからは、日常的な雰囲気の中でその能力を(しょうもないことのために)楽しむことになります。時間移動ものならではの複雑なタイムパラドクスとか登場しないので、タイムリープは単に魔法的な能力だとしても支障は無いですね。
 真琴が千昭から告白されるシーンからは、能力の使用の方向性とか3人組みの雰囲気などが変わってきます。単純にいえば真琴は、「この楽しい時間がずっと続いて欲しい」と思っていたのでしょうね。進路のこととかも深く考えず、今の楽しさしか考えず、世の中が変わっていくことを許容するのが難しいという想いが、心の底にあったのかと思います。
 千昭の正体が分かるシーンで設定が色々明かされます。が、まあ複雑な設定でもなく。
 真琴が千昭を「好きだ」と言う心情は、なかなか複雑そうです。目がハートマークになるような(比喩が古い…)そんな心情では無く、もしかしたら「like」と「love」の間のような「好き」だったのではないかと、個人的には思います。
 ラスト、千昭は真琴にキスをするかと思わせといて、しませんでした。この演出はおそらく、真琴と千昭の関係は「男女間の愛」の一つだけでは終わらないような、友情のような愛もある複雑で微妙なものにしておきたかったという作者の思いがあるのでしょう。そうやって微妙にすることによって、私たちは視聴者は、あっさりした感じよりも余韻を楽しむことができたのだと思います。

 Time waits for no one.

 時は過ぎていきます。ずっと同じ時間が続けばいいのにと思っていても、やっぱり時は非情に流れていきます。しかし未来には、千昭のような素敵な人間もいるというような、面白かったり良かったりする何かが待っています。
 「時をかける少女」はそんな、SF的な時間よりも人の心の時間などを主題とした作品だったのではないかと私は思います。

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Posted by YU