Atopes(アトペス)の感想――ミニゲームも面白い創造力への讃美歌
Steam等で公開されている、日本人の個人制作フリーゲーム、「Atopes」をクリアしたので感想を書きます。
ジャンルは「哲学」、これまた不可解ですね。
哲学的なゲーム、というとテキスト系が多いですが、このゲームは『ゲーム』です。
意外に面白いミニゲームたち
いっちゃあなんだがグラフィックとかは最近のハイエンドゲームに比べたら、クオリティは低い。
でもこれはこれで個人制作らしさがあり、ひいては人の想像力・創造力を演出する効果もありました。
弾幕シューティング、謎解きアクション、ブロック崩し、脱出系謎解き、コマンドRPG、すごろく、とまあ様々な形態のゲームが出来ますが、どれもかなり習作っぽい。
「プログラムを学んで、いろんなものを作ってみよう!」って気持ちは伝わってきますよ……
でも習作は習作みたいなんだけど、ゲーム性に関してはかなり工夫が見られ、単純な面白さがありこれはすごい。
ただほかの古い有名作品をパクっただけかと思いきや、育成があったりアイテム集めがあったり。
作者は本当、どんなジャンルに対しても本気出すタイプなんだろうな~?
個人的には「ウサギクロニクル」と「虹色」が好きか。
ウサギクロニクルは自分のテクで突破するのも良し、育成して圧倒するのも良し。
虹色は謎解きの難易度がちょうど良かった。ラスボスは苦戦した……
メタゲームとして
表題の「Atopes」とは何か?
その答えは明示されています。
Ability TO Pursue the End of a Story
(物語の終わりを求める力)
創造、困難へ立ち向かうエネルギーの源泉、それを作者はAtopesと呼びました。
トゥルーエンドに向かうには、ゲームの終わりを求める力が必要でした。
ゲームそのもののファイルを操作し、作中で「もう終われ」と言われても、この先にある何かを求めてプレイヤーは終わりへ向かっていく。
このゲームは非常にメタいです。もうメタメタです。メタメタメタメタですよ。
ほぼ全てのゲームにメタ要素を含んでます。
特に「世界で一番近い場所」は、ゲームよりも物語へ入る力の弱い小説という媒体で、メタ的な謎解きを施したからこその没入感があった気がします。これは上手かったし、技巧に富んでて斬新。
このゲームはゲームを、ひいては人が創造するもの全てへの『讃美歌』です。
その賛美が少々くどい時もまああるけど、個人制作のフリゲだからこのくらいポエミィでも良いでしょう。
魔王を倒す、ハッピーエンドへ向かう。物語の物語、というと名作フリゲの『イストワール』を思い出します。
イスト以外にも色々なフリゲに影響されてそうだな、というかフリゲの空気があるよね。
と思ってましたが『特に影響を受けている作品』の中にイストは入ってないんだ……(タオルケットシリーズはある)
個人的には個人制作フリーゲームが、最も『Atopes』を感じる媒体です。
なぜって他の音楽や絵や動画よりもゲーム作りってハードル高くないですか?
プログラムだけでなくて物語も絵も音楽もどうにかしないといけないマルチメディアでもあるし、制作の苦労が偲ばれます。
そんなめちゃくちゃ時間も才能もかけたものを、無料で公開するだなんてww??意味不明だよ!
と思っているのに、フリゲを作る人は今も昔もいる。
その力の源泉がまさしく、『Atopes』なのだろうと。
思いついたもの作ってみたいもの、神のような絶対的な価値のあるものが我々の心の中に生まれ、その体現を目標とする。
創造とはそういうものでしょうか。
クリエイト業は金稼ぎにはむかないものだ。だけどそれで食っていきたい人は大勢いるとのこと。
しょうがないじゃない、憑りつかれてしまったのだから。
人類がアフリカで生まれ、南米の最南端へ到達した、外へと探求する力。
人種も言語も様々な人間たちをまとめあげていく、宗教や芸術などの内への力。
人間には、求める力があった。この力とは?
ゲームを通じて人類共通の目に見えない力を探求したのが、このゲームであるのでしょう。