「Milk inside ~」・「Milk outside ~」の感想――統合失調症の少女はどこにゆく?

2020年~2021年に発売された「Milk inside a bag of milk inside a bag of milk」と「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk」の2作品をクリアしたので、感想を書きます。

非常に変なタイトルですが、言葉のサラダのせいなので意味は理解できなくて当然です。
とりあえず便宜上「Milk inside」と「Milk outside」と略しておき、少女は「Milkちゃん」と呼んでおきます。

主な製作者はNikita Kryukovという若いロシア人であり、ゲームの舞台もロシアであるよう。
ロシア外の人間がロシアをイメージするように、凄い陰鬱的な雰囲気が最初から最後まで貫かれているゲームです。
非常に短く安価なインディーズ作品ですが、この前衛的な作りが受けて世界各国の言語に翻訳され、評価も受けています。

基本的には選択肢が登場する単純なビジュアルノベル。
ごく一部の小さなアイテム以外はトリッキーな操作(選択肢画面で待つ、選択肢外を選択するとか)を必要とされることはない、オーソドックスなゲームです。

Milk inside

選択肢を選びながら、少女の脳内話し相手になりながら牛乳を買いに行くだけのストーリー

のはずなんですが、統合失調症のおかげで支離滅裂にもほどがある進行。
Milkちゃんの精神に負担をかけるような選択肢(思考)を多くしてしまうとそこでゲームは終了、最初から。
とは言えギミックが分かってしまったら選択肢選びも簡単で、起動からエンディングまでは10~20分程度、とのこと。

プレイ時間は短いのですが、最初からぶっ飛ばしているので、非常に濃厚
不安を呼ぶテキスト表示音、ピクセルアート(?)、色合い……

家から店に歩いて、牛乳を探して、会計して、牛乳を持ち帰るだけで、こんなゲームよく作ったよな……と思います。
この短さと内容は商業では間違いなく不可能でしょうが、インディーズではこういうのもアリだよなと、表現の自由さに関心すらしてしまう。
怪作でした。

 

Milk outside

まず驚いたのは、ハイクオリティなOPムービー。

ロシア人が作ったはずなんですが、一昔前の日本アニメ風で親近感あります。
Milkちゃんが普通に可愛いのも、すごいアリアリのアリ。

 

それでまあOPムービーを見て思ったのですが、もしかして製作者(もしくはアニメーター)って「Serial Experiments Lain」に影響受けてる?
憂いのあるキャラデザに、電線をやけに映すところとか。
あれも精神疾患を扱っていましたねえ……
何かの間違いでゲーム版LainがSteamで発売されないかな。あれ、プレミア付いてんのよね。

 


2作目となるMilk outsideも短いゲームで、エンディングまではすぐ行けますが、マルチエンドとなっていたりムービーが挿入されていたりと演出は少し豪華になりました。
前作みたいに辛辣な選択肢を選んでもゲームオーバーにはなりませんが、どのエンドもグッドエンドじゃないような……?

ポイント&クリックが使えるタイミングがあり、そこでMilkちゃんの過去についての情報が集められます。
ネットと数学に強そうな面があり、多分アスペルガータイプでもあったかもしれません。
しつこく聞いたら学校を退学する時の様子も聞けたり……

流石の自分も統合失調症患者にはなったことは無いと思うので理解は出来てないのですが、Milkちゃんは思い出すと吐き気を催すほどの過去のトラウマとかはないのだろうか。
トラウマがあったとしても、統合失調症による別解釈により正面から受け止めてもないのだろうか。
プレイヤーがしつこく過去を聞く行為(過去を思い出す行為)は、統合失調症患者にとっては辛いものだろうか、寛解に繋がるものだろうか。

5種類のマルチエンドですが、全部意味分かんねえ。
正確に言うと、一部はMilkちゃんの現実への折り合いみたいなものが示唆されているようにも感じる。
でもせめて、せめてどれか1つくらいは分かりやすい現実的な(救いがあってもなくても構わん)エンドも欲しかったかな……

しかし、やっぱり今作も怪作でした。
作者のTwitterを見るとこれからも何かしらの活動をしていくようなので、楽しみです。
日米以外の日常系(?)作品って少ないから、文化の違いも含めて非常に新鮮味があって面白いです。

ちなみに、日本人Twitterでファンアート書きすぎだろ!ってくらい作者にリツイートされてるw

市販ゲーム

Posted by YU