ヨイコノミライ 4巻感想&総括
雑記
ポポロクロイス物語1をやりこみプレイしているんだけど、アイテムの取り残し発見!
数時間がパーです。
4巻
有栖川と平松ペアの関係はかなり危なくなってきています。その理由としては、平松が努力している有栖川に能力的に負け始め、「自分は見下されている」と思い始めているからです。
2巻で、痛いやつらは自分に敏感で他人に鈍感、一度受け入れられたら全てを受け入れてもらおうとするということが書かれていましたが、これはその具体例ですね。つまり、痛いやつらは自分は良くても他人の意志とか、自分はいなくても大丈夫だというような行為などは嫌いなのでしょうかね。かなりの自己中心主義ですが、だからこそ社会に受け入れられないのでしょう。
編集者として無能なのに編集者を目指している井之上は、自分の理想の浅はかさを思い知らされます。
良い作品を作るためには、ただ作者の書きたいものだけを書いていても駄目なこと。何もしないでダラダラとすごしている漫研に真剣な課題を持ち込んだことによって、最初の居心地の良さは無くなり、みんながギスギスした雰囲気になってしまったこと。そして、必死にみんなが傷つきあって頑張ったのに、薄っぺらでどうしようもない稚拙な本1冊しか作れなかったこと。
井之上のことを気に食わなかったのですが、このような流れは良いと思いましたよ。根拠も無い自分の力量で大きすぎる理想を掲げ、頑張って、挫折する。一人の現実を知らないオタクが、真実を知る結果になったというのは、まさにこの漫画の主題といって良いでしょう。
しかし、オタクたち全てが真実を知って挫折したわけではありません。中には、自分の力量を知って、そこからまた歩み始めていこうとしていく人たちもいます。
桂坂は、自分を必要としてくれる人を必要としている人間で、また、リストカット癖もあるような人間です。彼女は、本気ではないのかもしれないけど自分を必要としてくれる人間を救おうとしますが、ただそれは相手が自分から離れて欲しくないからしたようなことで、その結果相手が自分から離れてしまいます。
「何もかも中途半端で、結局何も出来ない」と、青木から非難された桂坂は、本気でリストカットをします。しかし、何とか命をとりとめ、傷心の中で衣笠弟に慰められていい感じになってきます。
この桂坂のエピソードがこの漫画で一番いいです。衣笠弟は、馬鹿な女をひっかけて遊んだりしていましたが、そんな彼だからこそ賢い女である桂坂に惹かれていたというところや、傷つきあっても本心で相手に自分の気持ちを言おうとしているところなどが、いかにも青春漫画らしくて、読んでいて清々しかったですよ。
後、3巻から身の程をわきまえることを知ってきた有栖川は、自分の力量を理解しながら、本気で作家を目指そうとしています。最初は口だけで文句ばかり言い、他人に対して排他的なところがあった彼女ですが、本気で作家を目指すようになってからは、どこか態度も柔らかくなって、好印象を持てるような人間になっています。
最後に、部のやつらに真実を教えようとしてきた青木ですが、ラストでその本心を全て曝け出してくれます。
作者や作品を批判してばかりの天原に対し、青木は「人が作ったものを安易にくさして優越感に浸るやつらのために、皆は必死で描いているんじゃない!」と言って、本音で非難します。彼女がこのように声を荒げて言うのには理由があり、それは、彼女の母が漫画家であり、天原のような読者の声によって潰されていったからです。
だから彼女は、自分の本当の力量も知らないくせに、他人のせいにしたり安全な場所で好き勝手にするやつらを憎むことになったのでしょうね。
青木の父は編集者で、井之上の理想と同じような理想を青木に押し付け、青木は幼いころからプロの漫画家を目指させられます。自分の意思や描きたいものとは違う、ただの「売れる漫画」を描き続けています。
そんな父を恨んでもいそうな青木が、どうして父に似た井之上に惹かれたのかと考えると、おそらく彼女は父に、「憎しみ」と「ほめられたい」という相反しそうな感情を持っていたからだと思います。だから彼女は井之上のことを、大嫌いだ!と必死に自分に言い聞かせてきたのにも関わらず、井之上に優しくされると父にほめられたように嬉しくなったりして惹かれてしまったのでしょうね。
総括
痛い漫画として読み始めたのですが、案外そんなに痛いという感じでは無かったかも。そもそも痛いというのは、恥ずかしくて見てらんないといった感情でしょう。確かにこの漫画に出てくる人間たちは、少々普通ではないような人間が多かったですが、こういう人間たちはネット上と現実問わずによく見かけるので、少し慣れてしまったんですよね。
この「痛さ」についてもう少し言及しておくと、他の人のサイトなどでこの漫画の感想を調べてみると、「自分の古傷がえぐられて痛いです…」などというようなのが多いようでしたので、みんなはこのような感じの青春を送り、今はもうその過去を恥じているのでしょうか。私は特に古傷をえぐられたりすることはありませんでしたね~。別に学生時代はオタ系の部活に入ったりしませんでしたし、オタク友達もいませんでしたし。過去を思い返すと、自分の恥というものはもちろんあるのですが、それは別にこの漫画の主題に合致するようなものではなさそうですし。
一応オタク成分は入っている自分ですが、耳が痛くなるようなことを感じなかったのは、自分が現在進行中で痛いやつだから?それとも実際に漫画家を目指しているような人間じゃないから?
この漫画に出てくる痛いやつらは、簡単に言うと、自己中心的で自己顕示欲が強く、根拠も無い自信を持ち、「やれば出来る」として自分を少しでも傷つける可能性のあるような努力をせず、他人をけなすことに関しては必死な人間たちです。
この漫画はオタクを題材として描いていますが、上記のような性質を持つ人間はオタクの中だけにいるのではありませんね。現実にだって、頭おかしいんじゃないかと思うようなクレーマーやアッチ系の市民団体、すぐに因縁つける肝っ玉の小さいチンピラどもなどがいます。ネット上にも自分の意見を曲げずに掲示板などを荒らすやつらや、DVD割ったり漫画破ったりして自分の気に食わない展開があるとすぐに駄々をこねるやつらなどがいたり。
言ってみれば、この漫画は社会の中にいる明らかに異常で醜い人間たちの性質を、オタクを例として漫画に描いてみた作品でしょうね。まあ、別にここまで社会全般にまで話を広げる必要は無いのでしょうが、私はそのように連想してみましたよ。
あと、この漫画は上記のような「痛さ」を描いただけの漫画ではなく、高校生などによくある、夢や挫折を描いた作品としても評価できるでしょう。
高校生の頃は将来に希望を持ちがちな年頃です。高校生は活力があるので「やれば出来る」とか思ったり、生半可に社会を知らないので社会に希望を持ったりするのでしょうね。スポーツ系の部活がよく夢のあるものだとしていろんな作品に描かれて、挫折を味わうこともよく描かれています。そのような部活と同様に、オタクたちもちゃんと夢を持ったりして、夢を叶えたり挫折したりするのでしょう。死ぬ気で作品を作り、評価されたり、評価されなかったり。
この漫画は、そんな明るいだけで終わらない少し暗めな青春を、オタク系の部活を題材として描いた作品でもありますね。
1~3巻 感想
ヨイコノミライ 4 完全版 (IKKI COMICS) (2006/09/29) きづき あきら |