なるたる 総括

2020年1月27日

雑記
 昼寝4時間ぐらいしたおかげで、こんなに早朝に近い深夜なのに眠れない。
 


総括
 なるたるの総括記事です。ここでは疑問だった箇所の考察や妄想、そしてそれから導き出される新しい「なるたる」の像への感想を書きます。考察の役に立ったのは滑走キとまとめサイトの二つのサイトでした。
 まず一番最初の謎は、鶴丸について。
 彼はシイナと接触する前にシイナのことを知っていました。そしてシイナにホシマルを与えて、いろんな事件に巻き込んだりいろんなことを考えさせました。彼がシイナに行ってきたことの目的は?その疑問の前に鶴丸のことを知っていきましょう。
 鶴丸個人の野望は、女に子供を生ませまくって自分の子孫を数多く残すことのようでした。しかしそのことはシイナに近づく目的とは一線を画すように思えます。シイナは将来「創造」を司るかはまだ決まっていないですし。
 もう一つ、鶴丸を理解するために知っておくことは、鶴丸と須藤はいろんな点で対になっていることです。次にその例を載せます。左が鶴丸、右が須藤です。
ホシマル⇔トリックスター  形が似ているけど目つきとかが対照的
混沌へ拡散する創造⇔虚無へ収斂する破壊
性欲が強い⇔性欲が無い
悪い人に見える⇔いい人に見える
シイナのそばにいる⇔クリのそばにいる
 このように鶴丸と須藤は対照的となっていますが、だからこそこの二人はどこか同じようなところもあるんじゃないだろうかと私は感じます。であるからして、鶴丸の目的は須藤のそれとほとんど合致するのではないか?
 
 須藤の思想は彼の死ぬ間際に暴露してくれます。
 これまでは「人間を選別して優れた社会を作ろう」というのが彼の思想の根底にあるように思えましたが、本当は須藤には思想なんて無かった
 須藤は問答無用で人間全てを殺そうとしたが誰が生き残るかは興味ありません。そもそもこういった破壊や創造は考える必要の無い実行者がやること、つまり人間で言えばただの手足のようなものがすることだと考えているのでしょう。そして最後に発したのは、一番嫌いなのは自分、ということ。
 人間の選別、というのは自分が賢いとか優秀であるとかそういう風に思っている人間が考えることでしょう。須藤が自分のことを嫌いだと言ったのは、これまで偉そうなことを言っていた須藤への読者の意識を改めさせる効果があったのでしょうかね。
 しかし、須藤の行ってきた破壊行動は一体誰の導きなのか?
 須藤が本格的に人間を滅ぼし始めた、11巻ラスト辺りから成体の竜が続々と現れます。その中に相当古い時代の生物の竜もいるので、おそらく竜とは生命そのものと同じ歴史があるようです。…そして、竜は現世に干渉しません。しかしここにきて思いっきり干渉し始めています。
 こんなに多くの竜が一斉にやってくるということは、この動きは竜が個体として、つまり自分で考えて行動しているのではなく、竜よりもさらに大きな存在が彼らを率いているのではないでしょうか?もしその仮定が正しいのなら、竜よりもさらに大きな存在、つまり地球が須藤の破壊行動に関係していると考えられます。
 大前提として、竜骸は意志を持ちません。ですのであのときの竜の行動は、竜骸化した地球を掌握したクリによるものだったのでしょうね。ということは、須藤の行ってきたことはクリの望みだったのではないでしょうか。一体なぜクリが地球の乙姫となり、創造と対にある破壊を司ることになったのかは、考察材料が少なすぎてわかりません…。
 
 上記の記述が正しいのなら、須藤はほとんどクリに使われていたような感じだったのでしょうか。では鶴丸は?
 須藤はクリに導かれていましたが、シイナは鶴丸を導いてはいません。しかし、須藤がクリを守ったりサポートしていたのと同様に、鶴丸はシイナを守ったりサポートするのが彼の役目だったのでしょう。
 そもそも鶴丸はいつシイナのことを知ったのでしょうか?最初期から彼はシイナのことを知っていました。ということは始めて会った時点で、鶴丸はシイナが地球の保持者となることを知っていたのでしょうかね。一体どうやって知ることが出来たのかはわかりません…。
 以上、鶴丸や須藤についての考察は、肝心なことがわからないまま終わることにします…。
代替できる世界 次は、「なるたる」全般の感想、そして作者が最も表したかったことを考察します。
 なるたるのストーリーの流れとしては、いろんな勢力が出てきても、結局それら全部シイナとクリが地球を掌握するためだけのパズルのピースなだけで、最後は全てをぶち壊してエンディング、という感じでしたね。
 クリが最後に言った言葉「命は代替がきくから、命たりえるんだから」というのは具体的にはどういう意味だったのでしょうか?
 最終巻の最後に作者の言葉が載っています。要約すると、「生物はいてもいなくても変わらない」ということでしょうか。作者とクリの言葉とは、命を特別視して命を守ることや残すことが最重要だという考えへのアンチテーゼでしょうね。確かに生物なんて、地球レベルで考えればただの物質循環の一つに過ぎないですからね。
 もし命が代替のきかないものであったのなら、おそらく生態系はカオスとしかいいようの無いほどに荒れてしまうと思います。代替がきかないというのは、ある一つの生物にはその生物にしかない能力を持っているということです。もうそうなると「種」という概念は無くなります。全てが完璧に異なっていますから。
 私達人間が絶滅しても、その領域を埋めるかのようにまた他の生物が拡散していくだけです。それと同じようになるたるの最後も、全ての人間を一掃してもまた新たに子供は生まれ新しい世界が作られる、ということを意味しているのではないでしょうか。それはどんなに変化したくなくても全ては例外なく変化していくということも表しているかもしれません。
 
 ここまで考えて思ったのですが、シイナがあのタイミングで地球を掌握できたのは、自分の名前を享受することでこれまで子供なんて生まないと思っていた自分から子供を生むことを許容できる自分に変化したことによって、新しい世界を作る創造力を手に入れたからというわけかもしれません。
 しかし世界を作り、世界を破壊することのできるこの二人は、地球上では「かけがえのない命」ではないのでしょうかね?もし彼女らが死んでも、やはり地球はまた新たな命を探して代替するのでしょうか?大役を背負ったように見える彼女らですが、彼女ら自身もただの代替できる生命であるという思いを持っているのか、と考えてしまいます。
 
 個人的見解ですが、なるたるで最も表れていたのは
 生も死も意味は無く、全ての生命は本質的に虚無である。
 であると、私は感じました。まあ、だからどうなんだってことです。そんなもんだからこそ、私達は生命としての使命をまっとうしようとするのではなく、いつものように普通に暮らしていけばいいんじゃないですか?
1~3巻 感想
4~6巻 感想
7~9巻 感想
10~12巻 感想
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Posted by YU