イハナシの魔女の感想――とある離島の伝説とボーイミーツガールな王道ストーリー
2022年にインディーズゲームメーカーの「Frafaria」が開発した、ノベルゲームの「イハナシの魔女」をクリアしたので感想を書きます。
基本的に分岐は無いのでゲーム性はありませんが、ノベルゲームとしての演出はあるし主要なキャラはフルボイスなので臨場感がある物語です。
タイトルの「イハナシ」とは、沖縄の方言で「言い伝え」のような意味を持ちます。
沖縄のとある小さな島と、言い伝え、そして『魔女』。そんな舞台と設定。
感想
絵柄はシンプルながらもコミカルさと儚さが同居する、親しみを持てるものでした。
小粒なゲームだからか一枚絵はそんなに多くなく、立ち絵と背景で状況を変えていくのが多かったです。
サービスシーンの一枚絵もっとくださいお願いします。
キャラはアカリちゃんが好み。
メスガキというかイキリ童貞というか
序盤のラップバトルや選択肢破壊はクスっときちゃった。
でも女性キャラたちに沖縄感はない。
舞台は不便で時代遅れなただの田舎……ではなくてちゃんと令和時代の日本にアップデートされており、相応の技術を使いながらもやはり残る離島の雰囲気。
隣町まではフェリーに乗って買い物にする、みたいなのは不便でもありますが、沖縄本島から東京なら飛行機でもさほど時間がかからない距離感は、何だか悲壮感や取り残され感を和らげてくれる交通事情でしたね。
過疎化も進んでいるのかもしれませんが、物語の中ではそういうのもあまり感じさせず、島民たちの朗らかな日常を感じさせてくれるものでした。
お話のメインである魔女というのは「リルゥ」のことですが、むしろ序盤は影が薄くなるくらい。
頭のおかしい女たち、というか外見的に頭がおかしくなる女のインパクトが強くて、正体不明のリルゥがごく普通の人間に思えてしまうという。
もうね、キリコのあの立ち絵を見た瞬間、絶句よ。
キリコだの「ポロリ」だの選択肢破壊だの、よくあるテキストゲームだと思っていたらそういう演出ぶっこんでくるから、「このゲーム、違うな!?」と思った次第。
ラストのリルゥ編は、ファンタジーと琉球神道を組み合わせた、少し勉強にもなる設定。
ボーイミーツガールで始まり、途中では男の子が女の子に助けられながらも、ラストは男の子が生死を賭けてでも女の子を助ける。
なんて王道なのだ……
王道だから、何度でも心が熱くなるんですね?
長い歴史と伝統の終着を、この手で迎えることにもなったしで。
あとがきでは「王道のストーリーを突き詰めてみたかった」とあるように、このゲームは王道です。
王道ですが、工夫された演出はあるし令和の日本にもアップデートされており、良質なゲームであったと結論付けましょう。