マンホール 総括

ではまた総括を書いていきます。
ここでは主に黒川のしたことについて触れていきます。
彼は本当に間違っているのか?そこら辺について自分が考えたことを書いていきます。
漫画の感想とはまた違うものになるかも。


 黒川の目的、それは犯罪の無い世界をつくること。
 彼の孫は変態野朗によって犯され、物言わぬ蝋細工のようになりました。そしてその後、陵辱されている姿を映したビデオテープが彼の元へ送られました。その結果、彼はその信念に行き着くことになりました。
 彼が受けた傷は、私如きが想像も出来ないぐらい、心の奥底まで届くほどのものだったのでしょう。私の愛する家族が、そのような被害にあえば、私も同じぐらいの傷を受けるでしょう。月並みの言い方をすれば、気持ちは分かる、ってなもんです。
 さて、質問です。彼のされたことを知っていながらも、あなたは彼に間違っている言えるのか?漫画の中でもある年配の刑事さんが思っていましたね。それでもあなたは間違っている、と言えるのか?と。
 私は犯罪のことに関しては殆ど全くの無知であって、あまりこのことに関して論じる権利と言うものは無いのですが、心情というのは理解できます。まだ私の心は正常ですので。 
 勿論、犯罪の是非を心情で判断してはいけないということも理解しています。もし心を重んじれば、弁舌の上手いやつが同情されて刑罰が軽く、口下手なやつが反省をしていないということで刑罰が重くなってしまいますからね。
 ではやはり心なんて考慮せずに、やったことだけを考慮して裁判をし、罪を決めたほうがいいのでしょうか?
 少し話を変えます。彼のしたことについて考えます。彼は犯罪を無くすために欲望と片目を奪うフィラリアを撒き散らそうとしました。そのことは正しいのか?
 確かに犯罪の無い世界は美しいものだと思います。私もいつも何かを奪われることを恐れ、生きています。その恐れがなくなれば、どんなに心が晴れることか!もう他人を恐れること無しに、みんな仲良しな世界がつくられることはいいことですね。
 しかし、この漫画に出てくるフィラリアに感染した人間は、猛烈な記憶障害と痴呆になっています。黒川と溝口は自分の欲望と折り合いをつけたのでまだマシそうでしたが。そんな殆どの人間の精神を狂わせるものは、危険すぎですね。普通の人間が狂うことになるのですから。欲望と折り合いをつけたものだけが助かるとのであって、普通の人間は助かりません。つまりそのままフィラリアが広まれば、世界は自制心が強い人間だけになります。そうなれば、やはり犯罪は無くなりますが、人間の数はごくわずかになるでしょう。その観点から見れば、種の保存から言って黒川は悪人です。種の絶滅の手助けをしているわけですから。そして刑罰の観点から見ても犯罪者です。大量殺人をしようとしているのですから。
 考えていくうちに、黒川は立派な犯罪者であると行き着いてしまいました。ですが、思い返してみてください。私は最初に彼は間違っているのかどうかを考えると書きました。ここまで長々と書いたのは、黒川が立派な犯罪者であることを再認識するためです。
 ではここから思いっきり個人的考えですが、私は彼のしたことは悪、だと思います。確かに理念はすばらしい。しかしそれに対する犠牲があまりにも大きすぎるのです。
 人の欲望、それは生きる糧であると思います。あなたは何の娯楽もなしに、全く面白くない仕事をやって人生を終えたいですか?そんなことを肯定する人はおそらくいないでしょう。
 欲望が暴走することは多々ありますが、それを完全否定すれば、幸せがなくなります。かといって欲望を放置しておけば、犯罪が増え不幸になります。そのさじ加減はおそらく想像もつかないほどの難しさでしょう。欲望を抑えても放置しても不幸が訪れるのですから。
 そんな混沌の中で黒川のような過激派が現れるのは必然だったのでしょうか。やはり私にはこの問題は荷が重すぎたようです。
信条

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Posted by YU