攻殻機動隊S.A.C Individual Eleven 感想
攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG Individual Eleven
制作 ProductionI.G 監督 神山健治
テレビアニメ版攻殻機動隊の2期にあった「個別の11人事件」を、160分にまとめた「Individual Eleven」を視聴したので感想を書いてみます。
ネット上の感想を見ると、まとめる際に端折られたシーンが多いようですね…。
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序盤にあった、ジガバチVS公安9課のちょっとした戦闘は、短いながらもものすごい密度の濃い戦闘で、超興奮しましたよ!あのシーンだけ何度も見返しました。それほど中毒性がありました。
人間が搭乗したタチコマの本気を見せてもらいましたよ。あんなに強かったんだ…。タチコマが重心を変えながら滑らかに移動するシーンとかは、日本のロボットモノ(?)の真髄を垣間見た気がします。
あのシーンはBGMも最高ですし、タチコマのバック移動の際の「ブルルル!」っていうような効果音も最高でした。少佐やバトーの台詞も短いながらも最高にかっこいいし…こういう近未来的ながらも現実にありそうでかつ最高にかっこいい戦闘シーンとかを今のアニメでも増やして欲しいわ。
今回の事件の設定の概略も作中で教えてくれますが、戦争が起こって難民が日本にやってきて…というような近未来にありそうな時代の流れですが、ある程度事件を公安9課などのような小さめな組織でも対処出来るレベルまで抑え込んだのは、個人的に大変良かったと思います。
合田は「英雄をプロデュースする」という変わったことをしようとしている面白いやつでしたが、やっぱり作中でも言われていたように、笑い男事件のアオイのほうが実力があって、公安9課の対抗勢力としては魅力的でした。つーか童貞を個別の11人ウイルス発症因子にするのって、合田の個人的推論から?英雄色を好むはいかんのか!?
しかしよくわからなかったのが、表題にもなっている「個別の11人」です。今回のまとめたものでは、全く11人である必要性が無かったように思えます。じゃあどうして個別の11人なのか?
ということでちょっとネットで調べてみると、シモーヌ・ヴェイユが元ネタだったとか三島由紀夫の著作が元ネタだとかのような情報が出てきます。でもどちらも私には全くわかりません…。
今回の事件は日本の五・一五事件などが元ネタのようになっているようですね。過去・現代から大きく変わった近未来を舞台にしても過去に起こったような事件を元ネタにしてみるってのが、中々ニクイ演出です。人間は歴史から学び、そして同じようなことが起こった場合どう対処するかってことなのか、はたまた社会や人間心理の根本を問うてみているのか。
そう言えばクゼが行っていた、「利子の小数点以下を集める」ってのは現実でも出来るんだろうか。今でも国民は知らず知らずの内に搾取されていたりするのでしょうか。
ていうかどうしてこういうことをアニメの制作者は思いついたりするのでしょうか。そういう指摘が昔からあったりしたから参考にさせてもらったのかもしれませんが、どうやったらそんな知識に行き着くことが出来るんだ…。はあ、マジ制作者側のことを思えば思うほど、この作品は常軌を逸していることがわかります。
SACはスタンドアローンコンプレックスの略であり、個人でありながらも情報の共有化などで全体として集団的な行動をとってしまう現象のことを言っていますが、今回の物語ラストではそれを逆手に取って、公安9課や出島の難民、クゼや合田やタチコマまでがスタンドアローンで行動しようとする演出をしてくれています。
ああいう、各勢力がそれぞれで行動するのは個人的に好きです。一体どうなるかが全くわかりませんからね。
全てが硬派な設定とアクションで構成されているかと思いきや、中々人間味あふれるシーンもたまにあって良かったです。人々に英雄視され、英雄をプロデュースする合田にはめられたようなクゼですが、彼も頼れる人を探していたってのはちょっと切ないものがあります。
英雄論は掘り下げようと思えばかなり掘り下げられる良いお題ですが、ここでは省略します。とりあえず、スタンドアローンコンプレックス現象を扱うSACの中ではクゼはかなり異質な存在のようでありながらも、それ自体がスタンドアローンコンプレックスだったのかもしれない…。
そう言えば最後の、神社での桜の24時間監視って何だったんでしょうか。最初見たときは「靖国神社か?」と思ったのですが、ネットで調べてみると違うっぽい。国に殉じた英霊を参っていたように思えたのですが…。違うか。
細かいところではまだまだ疑問が残ってしまった「Individual Eleven」ですが、やはりテレビアニメ版を全部見たほうが良さそうですね。近未来社会情勢と社会心理の原理とか、そういうのが関わってくるものすごく複雑な事件のようでしたから。理解しきるのだけでも大変難しい。